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【メルマガ日台共栄:第3540号】 台湾人元日本兵への補償  河崎 真澄(産経新聞論説委員)

2019/08/21

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1>> 台湾人元日本兵への補償  河崎 真澄(産経新聞論説委員)
2>> 大陸客の個人旅行禁止から2週間強、それでもあわてぬ台湾  武田 安恵(日経ビジネス記者)
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1>> 台湾人元日本兵への補償  河崎 真澄(産経新聞論説委員)

 昭和48年(1973年)4月14日に厚生省が発表したところによれば、大東亜戦争に従軍した台湾出
身の軍人は8万443人、軍属は12万6,750人、計20万7,193人に及ぶ。そのうち戦没者は3万304人だっ
たという。

 戦後、占領軍によって廃止された軍人恩給は、サンフランシスコ条約発効後の昭和27年(1952
年)に「戦傷病者戦没者遺族等援護法」が制定されて翌年8月に復活し、戦争従軍者およびその遺
族への給付援護がスタートしている。

 しかし、台湾と朝鮮出身の軍人・軍属はその対象から排除された。サンフランシスコ条約の発効
で台湾と朝鮮が日本の領土から分離されたことにより、日本国籍を失ったからだ。恩給は日本国籍
を有している者が対象とされた。

 ところが、東京裁判(極東軍事裁判)では、台湾出身者173人が通例の戦争犯罪と人道に対する
罪のBC級戦犯とされ、26人が死刑に処せられたという。

 台湾や朝鮮出身の軍人・軍属は、一方では戦争犯罪人とされて死刑にもされ、一方では日本国籍
を喪失したという理由で恩給から排除された。浮かぶ瀬のない、なんとも不条理な扱いを受けている。

 このような不条理に義憤を覚えて立ち上がったのが、台湾独立運動の先駆者で台湾語研究者であ
り、台北高等学校で李登輝氏の1年先輩だった王育徳氏(1924年1月30日〜1985年9月9日)だ。

 きっかけは、インドネシアのモロタイ島で1974年(昭和49年)12月26日に台湾出身軍人の中村輝
夫・一等兵が発見されたことだった。台湾には日本から見放された元日本兵が数多くいることに気
づき、早くも2ヵ月後の翌年2月28日には「台湾人元日本兵士の補償問題を考える会」を設立し、訴
訟と議員立法を促す両面から活動を展開しはじめ、戦後補償問題に取り組んでいる。

 その後、有識者、弁護士、台湾兵元上官、国会議員、一般市民など多くの日本人も支援したこと
で、12年後の1987年9月、台湾人元日本兵の戦死者遺族と戦傷者に一律200万円の弔慰金を支払う法
律が制定されるに至っている。

 その結果、日本赤十字社と中華民国紅十字会を通じて弔慰金の支給が開始され、1988年から1992
年の4年間で2万8,147人に総額563億円が支払われたという。

 以上のことは、去る6月22日に本会が開いた第46回台湾セミナーにおいて、講師にお招きした王
育徳氏次女の王明理さんに「台湾人元日本兵士の補償問題─日本人が官民一体となって解決した戦
後補償」と題して話していただいた内容だ。

 この台湾セミナーには、産経新聞論説委員の河崎真澄氏も出席していた。河崎氏には中村輝夫・
一等兵発見とその後の詳細をつづった『還ってきた台湾人日本兵』(文春新書、2003年刊)の著書
があり、連載中の「李登輝秘録」の合間を縫って駆けつけていただいた。

 昨日、産経新聞の「一筆多論」欄において、河崎氏は王明理さんの台湾セミナーで駆使した資料
などを基に「台湾人元日本兵への補償」と題する一文を発表している。その記事を下記にご紹介し
たい。

 河崎氏は、弔慰金の支払いは「確かに時期は遅すぎ、弔慰金も補償の範囲も決して十分ではな
い」と記す一方、王明理さんの「日本人の善意を感じた」という感懐も併せて紹介している。

 それにしても、台湾出身の軍人・軍属の国籍は日本から中華民国に変わったとは言え、日本人と
して従軍したのである。戦い終わった後に制定された法律で恩給対象から排除されている。違和感
は拭えない。

 恩給の根拠は、戦後変更された国籍ではなく、日本人として戦ったことに求められなければなら
ないのではないだろうか。弔慰金という一時払いで済ましたままでいいのだろうか。

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台湾人元日本兵への補償  河崎 真澄(産経新聞論説委員)
【産経新聞「一筆多論」:2019年8月20日】

 大東亜戦争で当時、日本の統治下にあった台湾からも「日本兵」として20万人以上が軍人や軍属
として出征し、このうち3万人以上が亡くなった。だが、台湾出身者は戦後、日本国籍を喪失した
ため政府補償を受ける資格を失っていた。

 他方、捕虜監視などで罪に問われた台湾人元日本兵約200人もBC級戦犯で有罪判決を受けている。

 公平性を著しく欠くとして昭和52年から、台湾人元日本兵が日本政府を相手取り、平等な補償を
求めて起こした訴訟は最高裁まで争われたものの、国籍が壁となり訴えは退けられた。

 それでも同じ日本軍の一員として戦場に向かった台湾人に、可能な限り報いたいと考えた人々が
いた。62年9月、議員立法で「弔慰金」制度が作られ、平成4年まで総額約563億円が支給された事
実がある。

 日本でも台湾でも忘れ去られつつあるが、「戦後補償で成功した希有(けう)な例ではないか」
と、台湾独立建国連盟の日本本部委員長を務める王明理さんは話す。

 きっかけは、終戦を知らぬままインドネシアのモロタイ島に潜伏していたところを、49年12月に
発見された台湾先住民出身で元日本兵のスニヨンさん(日本名・中村輝夫)の生還だ。

 このとき未払い給与などの名目で日本政府から支払われたのは、わずか6万円ほど。義援金は集
まったものの、この元日本兵より前に生還した横井庄一さんや小野田寛郎さんへの補償との落差や
冷淡な対応に、義憤を感じた人物がいた。

 台湾南部で生まれ、戦後の国民党政権による弾圧から逃れて日本に政治亡命していた明治大教授
の王育徳氏だった。王明理さんの父だ。王氏は50年2月、「台湾人元日本兵士の補償問題を考える
会」を結成し、事務局長として、署名集めや政府、議員らへの陳情、訴訟の支援に走り回った。

 無償で協力した7人の弁護団や、戦地で台湾出身者と親しかった元日本兵、戦後生まれのボラン
ティアら支援の輪も広がったが、さらに「縁」が味方した。

 王氏が15年から17年まで学んでいた旧制台北高等学校のOBの存在だ。衆院議員だった有馬元治
氏もそのひとりで、政府や国会などの調整を買って出た。

 2審の東京高裁では偶然にも、王氏の台北高同級生が裁判長として現れた。

 吉江清景氏だ。60年8月に吉江氏は、原告の訴えを退けるのはやむを得ないと司法上、判断した
が、そこに異例の付言をつけた。

「控訴人が同じ境遇にある日本人と比べて著しい不利益を受けていることは明らか。外交上、財政
上、法技術上の困難を克服、早急に不利益を払拭することを国政関与者に期待する」

 この付言が62年の議員立法を後押しした、と王明理さんは考えている。台北高OBは台湾人の心
情を理解していた。王氏は吉江氏の判断の翌月、心臓発作のため急死したが、その思いは関係者に
引き継がれた。

 台湾では元日本兵への補償問題で、「戦後の日本人は血も涙もない」と憤る声があった。確かに
時期は遅すぎ、弔慰金も補償の範囲も決して十分ではない。

 しかし、王明理さんによれば、台湾と外交関係のない中で、日本政府は日本赤十字社を通じた戦
没者らの調査をキメ細かく行い、弔慰金の支払いでも努力を惜しまなかった。「日本人の善意を感
じた」という。(論説委員)

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2>> 大陸客の個人旅行禁止から2週間強、それでもあわてぬ台湾  武田 安恵(日経ビジネス記者)

 中国の文化観光省は7月31日、47都市の住民に認めていた台湾への個人旅行を8月1日から「当面
の両岸関係に鑑み」一時停止すると発表した。

 本誌でもこのことを伝えたときに「中国が個人旅行を停止するのは初めてのことだそうで、ほと
んどのメディアは『個人旅行の停止を公表するのは異例』と報じ、その狙いを『総統選をにらんだ
蔡英文政権への圧力』としている」と伝えた。

 その後、台湾はどうなったのだろうか。韓国のように騒いでいるのだろうか。

 中央通信社は、中国からの宿泊客はこれまで全体の4割強を占めていたという台北の「円山大飯
店」は日本人や韓国人旅行客の誘致を強化することで新たな市場開拓に力を注いでいると報じ、林
育生董事長の「対策を練っていたため、打撃はそこまで大きくならない」との談話を紹介、中国の
このような圧力は織り込み済みとする台湾のたくましい一面を紹介している。

 日経ビジネスの武田安恵記者も「台湾の観光業は中国大陸に依存しない構造へと転換しつつあ
る」と指摘している。その記事を下記にご紹介したい。

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大陸客の個人旅行禁止から2週間強、それでもあわてぬ台湾  武田安恵(日経ビジネス記者)
【日経ビジネス:2019年8月19日】

 中国政府が8月1日に中国大陸から台湾への個人旅行を停止してから半月あまりが経過した。台湾
メディアによれば、足元では、中国個人客が1日単位で貸し切ることの多い観光タクシーの利用に
落ち込みが目立っているとのことだが、ホテルや飲食店などへの影響はなお未知数のようだ。

 今回の中国政府の動きには2020年1月に実施予定の台湾総統選が背景にあると考えられている。
「一つの中国」原則を認めない蔡英文政権に圧力をかけることで、彼女の再選を阻止しようとする
狙いがあると言われている。また7月に蔡総統がカリブ海諸国への外遊の途中、米ニューヨークに
長期滞在したり、米国から武器を購入したりと、米トランプ政権と親密な関係をアピールする動き
も、中国の強硬姿勢につながった。

 加えて、多くの台湾メディアが、香港の民主派市民のデモとの関係を報じている。中国大陸から
台湾に渡航すると、本土では流れていない香港デモの情報に接する機会が多くなる。情報統制の観
点から自由な渡航を制限しようとする意図があるとの見方だ。

 もっとも、台湾側は今回の中国大陸の個人観光客の渡航禁止を冷静に受け止めている。08年に当
時の馬英九総統が中国大陸の観光客の台湾訪問を認めて以降、中国大陸からの旅行者数は増加の一
途をたどってきた。12年には200万人を突破し、15年には343万7000人まで増加した。

 しかし、16年に蔡英文政権が発足すると、16年284万人、17年209万人、18年205万人と減少し
た。旅行者数の減少は、中国政府が台湾へのけん制を目的に、意図的にビザの発給を抑制した結果
ではないかとも言われている。それでも台湾を訪れる旅行者数は中国大陸からがナンバーワン。台
湾交通部観光局の統計によると2位の日本(144万人)を大きく引き離している。

 16年に中国大陸からの客足が遠のいた際、台湾の観光産業は大きなダメージを受けた。台湾では
中国大陸からの観光客を「陸客」と呼ぶが、「陸客専門」をうたうホテルやレストランの中には倒
産したところもあった。当時の反省を踏まえ、台湾では韓国や東南アジアからの旅行客を中心にビ
ジネスを展開する動きが加速した。

 台湾の当局も、中国大陸に依存しない経済成長を目指すスローガン「新南向政策」を掲げ、こう
した動きを後押ししている。対象となる東南アジア、南アジア、ニュージーランド、オーストラリ
アの計18カ国に対し、観光分野のプロモーションを強化。現在、東南アジア諸国から台湾を訪れる
旅行客に対してビザ申請手続きを簡素化したり、免除したりする動きを加速させている。

 大陸からの旅行客の落ち込みを東南アジアで補う構図は、訪台旅行者数の推移からも見て取れ
る。16年に1000万人を突破して以降、その勢いは衰えず、17年1072万人、18年は1106万人と大陸か
らの旅行者数の減少にもかかわらず、全体の訪台旅行者は増えている。

 中国当局による今回の措置がいつまで続き、どの程度影響が出るのかは、まだ分からない。一つ
だけ言えるのは、台湾の観光業は中国大陸に依存しない構造へと転換しつつあるということだ。

              ◇     ◇     ◇

武田安恵(たけだ・やすえ)
2006年、東京大学大学院学際情報学府修了。専門はジャーナリズム、メディア論。入社後、日経マ
ネー編集部を経て2011年4月より日経ビジネス記者。主な担当はマクロ経済、金融、マーケット。
海外記事の翻訳を掲載するページ「世界鳥瞰」の記事翻訳・編集も手がける。特技は空手(松涛館
流二段)、趣味はミュージカル鑑賞。主な著書に『私のマネー黄金哲学』(日経BP出版センター、
2010年)。

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