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【メルマガ日台共栄:第3431号】 なぜ台湾は「一国二制度」を受け入れられないか 周 学佑(台北駐日経済文化代表処札幌分処処長)

2019/03/18

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1>> なぜ台湾は「一国二制度」を受け入れられないか 周 学佑(台北駐日経済文化代表処札幌分処処長)
2>> 台湾医学界の父・堀内次雄  古川 勝三(台湾史研究家)
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1>> なぜ台湾は「一国二制度」を受け入れられないか 周 学佑(台北駐日経済文化代表処札幌分処処長)

 1月2日年頭に行われた中国の習近平・国家主席の「一国二制度」に基づく台湾統一に関する演説
には、即座に台湾の蔡英文総統が反論するなど、習演説に賛意を表するコメントや論考は見当たら
ない。

 本誌でも、産経新聞の主張「習氏の台湾演説 一国二制度を誰が信じる」、ピーター・アプリ氏
(「ロイター」コラムニスト)、有本香氏(ジャーナリスト)、小笠原欣幸氏(東京外語大学准教
授)、福島香織氏(ジャーナリスト)、読売新聞の社説「空約束に過ぎぬ『一国二制度』」などの
反論を紹介してきた。

 今度は、台北駐日経済文化代表処札幌分処処長の周学佑氏が産経新聞に反論を寄稿した。習演説
には、中国国内問題から目をそらさせるなど4つの背景があると分析し、「中国が武力による台湾
統一を放棄せずにいることはアジア太平洋の平和と安定に危険をもたらし、地域の利益を損うこと
に他ならならない」と指摘している。

 駐日台湾大使に相当する台北駐日経済文化代表処代表が台湾の立場や考え方について新聞などを
通じて公にすることはよくあるが、台湾の一官僚がこのような反論を公にすることは珍しい。下記
に勇気ある反論の全文をご紹介したい。

               ◇     ◇     ◇

周学佑
1966年6月12日、台湾・雲林生まれ。輔仁大学法律学部を経て淡江大学大学院修了後の1994年に外
交官試験合格。外交部条約法律局担当事務官を振り出しに、サンフランシスコ弁事処領事、台北駐
日経済文化代表処政務部部長、台湾日本関係協会副秘書長などを歴任。この間、オックスフォード
大学やロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにて研修。2017年6月、台北駐日経済文化代表処
札幌分処処長に就任。

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なぜ台湾は「一国二制度」を受け入れられないか
周学佑・台北駐日経済文化代表処札幌分処処長
【産経新聞:2019年3月15日】
https://www.sankei.com/world/news/190315/wor1903150030-n1.html

 1月、習近平中国国家主席がいわゆる「台湾同胞に告げる書」発表40周年記念式典で談話を発表
し、「一国二制度」による台湾統一の具体案を模索する考えを示した。

 この事態を受け、台湾は早急に声明を発表し、断固として「一国二制度」を受け入れない立場を
強調した。

 今回、北京の談話発表には4つの背景があると考えられる。まず1つ目は、中国は経済成長が鈍
化し、かつ米中関係が不仲という難局、また国内では香港、チベットやウイグルの問題がある。そ
のため内部の圧力から目をそらさせ、台湾に目がいくようにしている。

 2つ目は、中国が近年、パワーをもって世界の民主主義陣営、特に台湾の各分野において浸透を
図ろうとしている。その目的は台湾の民主主義を破壊し、最終的に台湾を併合することである。

 3つ目は、習氏が就任して以来、中国の海洋進出が次第に南シナ海や東シナ海に拡大し、軍機や
艦艇を台湾の空海域に出没させるなど、インド太平洋地域の現状を変えようとしている。

 4つ目は、台湾の民主主義的なライフスタイルは、大陸の住民が憧れる見本であり、そのため、
北京は民主、人権といった普遍的な価値が全土に広まることを妨害しようとしている、というもの
である。

 21世紀の台湾は、中国に対抗する民主陣営の最前線に位置しており、もし台湾が陥落したら、誰
が次を担えるのだろうか。従って、われわれは国際社会に次のことを呼びかけたいと考える。

 まず、台湾の民主主義制度を守るため、ともに協力してほしい。台湾の生存と発展はアジア太平
洋地域の平和と安定の力となり、そして世界民主陣営の安定的な発展に関わるものだ。

 また、中国の台湾に対する武力威嚇に断固として反対する。中国が武力による台湾統一を放棄せ
ずにいることはアジア太平洋の平和と安定に危険をもたらし、地域の利益を損うことに他ならなら
ない。

 そして、台湾が国際社会において自立した存在であることは客観的な事実であり、国際社会は自
分の将来を決める権限が台湾住民自身にあることを支持してほしい。

 最後に、台湾との実質関係の強化と台湾の国際機関への参与への支持に協力してほしい。国際社
会の多くの問題はあらゆるメンバーが共同で参与し、解決に取り組んでいかなければならない。

 台湾は国際的な義務を果たす意欲と能力があり、国際社会に対して積極的に貢献していきたいと
考えている。

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2>> 台湾医学界の父・堀内次雄  古川 勝三(台湾史研究家)

【nippon.com「台湾を変えた日本人シリーズ」:2019年3月17日】
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g00657/

 台北市中正区の台北府城東門(景福寿門)から伸びる仁愛路一段1号に台湾大学医学人文博物館
がある。

 旧台湾総督府医学専門学校の校舎だった建物の一部で1907年に建築された。当時、台湾総督府営
繕課に勤務していた近藤十郎による設計である。当初は赤レンガと白花崗岩を使ったバロック式で
建築したが、30年に発生した内部火災で大改修された際、ルネサンス様式の建物に姿を変えている。

 館内には台湾医学界に貢献した人物の胸像が設置されている。日本人では1899年の初代校長・山
口秀高、1902年の第二代校長・高木友枝、そして15年から21年間校長を務め、多くの台湾人医学生
を世に送り出した堀内次雄の3人だ。

◆コレラで次々と命を落とす兵士を診た経験から細菌学の世界に

 堀内は、1873年に士族の子として丹波篠山(現在の兵庫県篠山市)に生まれた。苦学をしながら
16歳で薬剤師試験に合格し、日清戦争の始まった94年に仙台の第二高等中学校医学部を卒業。95年
には陸軍三等軍医に任じられ、近衛師団に配属された。

 下関条約で1895年に領有した台湾に仙台近衛師団が上陸することになり、師団の軍医として従軍
した。そこで疫病のひどさと恐ろしさを経験する。同近衛師団の2割を超える兵がコレラに感染
し、死亡したのである。堀内は、この従軍経験から台湾における医師養成の必要性を痛感し、96年
に軍医を退役し、細菌学の研究に没頭した。

◆まん延するマラリアで母も失う

 台湾はかつて、風土病がまん延している島という意味で、日本内地で「瘴癘(しょうれい)の
島」と呼ばれることがあった。

 統治する上で、台湾総督府を悩ます問題が四つあった。一つ目は清朝も悩まされた武装集団の抵
抗であり、二つ目は誰からの支配も認めない先住民族の存在だ。三つ目はアヘン吸飲の悪習、最後
はマラリア、コレラ、ペスト、アメーバー赤痢、ツツガムシ病などの風土病だった。特に病気は目
に見えない敵であるが故に厄介であり、日本から赴任する官僚や役人も、渡台を嫌った。

 第三代総督乃木希典は、家族同伴での赴任を避けようとするが母親に「上司が家族を同伴しなく
て、部下に示しがつくか」と諭され同伴したとされる。ところが乃木総督の心配した通り、赴任し
てまもなくその母親をマラリアで亡くしてしまう。総督の家族でも逃れられないほど猛威を振るっ
ていたから、一般庶民はなおさら悲惨だった。

 清朝末期の台湾の平均寿命は30歳代だと推測されるほど低く、清潔な飲み水が得られる井戸は、
有力者や金持ちに独占されていた。総督府が井戸の独占を禁止したものの、庶民に清潔な飲料水が
行き渡る状態ではなかった。

 1895年6月17日に台湾総督府により台北において「始政式」が執り行われた。その4日後には、台
北大稲埕大日本台湾病院を設置し、日本より医師10人、薬剤師9人、看護師20人を招へいした。そ
れは74年の「征台ノ役」で日本軍の損害は戦死6人、戦傷30人と記録されているが、マラリアなど
の風土病による病死が521人という手痛い経験があったからである。

◆マラリアの後に流行したペストの撲滅に尽力

 1892年に内務省衛生局長に就任していた後藤新平の知遇を得た堀内は、96年に再び台湾に渡っ
た。台北病院の医員に着任し、以後台湾総督府の医療行政に関わることになった。台湾行きを勧め
た後藤は、98年3月に民政局長として渡台、風土病撲滅を推進することになる。

 堀内の渡台と時を同じくして、ペストが台南の安平港から広がり大流行し始めていた。堀内は直
ちにペスト菌検出の仕事に取り組む。当時、台湾に派遣された医師の中で、顕微鏡操作ができ細菌
学を勉強した医者は堀内しかおらず、周囲の期待を背負っていた。

 しかし、台湾人は堀内ら医師団の検疫を拒み、協力しないばかりか抵抗をした。当時の台湾人は
医者が消毒をしたり、火葬をしたり、解剖したりする事を嫌った。それらの行為は死者を冒涜(ぼ
うとく)する事と信じていたからである。そのような事態が続くうちに患者が急増した。96年から
20年間にペスト患者は3万人を超え、死者が2万5000人に迫る勢いとなった。患者の死亡率は8割を
超えるという信じられない数字になった。そこで堀内は日本から招へいされた東京帝大教授の緒方
正規や助教授の山極勝三郎とともに、感染過程の研究に没頭した。

 一方、総督府はペスト菌を媒介するネズミ退治が急務であると考え、1908年からネズミ駆除に取
んだ。17年頃になって堀内ら医師団の研究成果とネズミ駆除が相乗効果をもたらしペストの撲滅に
成功。住民たちは、うれしさのあまり「ペスト絶滅祝賀会」を開いたという。

 余談になるが、ペスト以外に台湾で猛威を振るったのがマラリアだ。堀内が医学校の校長になっ
た15年の台湾の人口は330万人ほどで、マラリアによる死亡者は約1万3000人になっている。ペスト
同様に台湾からマラリアを駆逐したのも木下嘉七郎、羽鳥重郎、小泉舟、森下薫らの日本人医師だ。

 台湾で最初にマラリア蚊を見つけた木下、新種の「台湾マラリア蚊」を発見した羽鳥、マラリア
蚊の種類と生態研究に業績を残した小泉、マラリア蚊の分布と脾臓(ひぞう)腫との関係を解明し
た森下。これら研究者の業績が評価され、29年4月には、台湾総督府中央研究所が「マラリア治療
実験所」を設立した。そこで小田定文、菅原初男、並河汪、石岡兵ら研究者が努力したため、マラ
リアをはじめとする熱帯伝染病が撲滅され、台湾は清潔で住みやすい島へと変わっていった。

◆台湾各地に病院を開設し、医学学校では医師を養成

 台湾総督府は97年4月には台湾人子弟のための医師養成を目的に、台湾病院内に医学講習所を設
けた。翌98年3月に第四代総督・児玉源太郎と民政局長に後藤が着任すると、台湾総督府台北医院
と改称した。当初は台北の他に、新竹、台中、嘉義、台南、鳳山、宜蘭、台東、澎湖島の9カ所に
病院を開設し、後に基隆、打狗(高雄)、阿猴(屏東)、花蓮港にも増設した。

 医学教育の開始は99年設立の台湾総督府医学校で、1902年には台湾医学会が成立し、学会誌が創
刊されるようになった。その後、19年には台湾総督府医学専門学校、22年に台湾総督府台北医学専
門学校と改称された。また、28年に設立された台北帝国大学に医学部は35年に開設され、38年に帝
大の付属病院に改組するという過程をたどる。

 1899年に設立された台湾医学校の初代校長には、山口秀高が就任した。就学年限は予科1年の後
に本科4年があり、5年で卒業することになっていた。当初は、台湾人のみを対象とし第1期生を募
集した。高木友枝が第二代校長に就任した1902年の卒業生は3人だったが、年ごとに増え、第5期の
卒業生は23人となった。

 助教授になっていた堀内は06年に総督府により細菌学研究のためにドイツへ派遣され、さらに12
年には東京帝大から医学博士号を授与されている。その3年後には台湾電力社長に転出した高木の
後を継いで第三代校長になり、台北市東門町6番地に開設していた日本赤十字社台湾支部病院の医
院長も兼務した。

 着任して4年目の19年には日本人の入学も認められたため、入学希望者が急増した。定員40人に
対し、その受験生は600人で競争率15倍の難関校となった。その台湾総督府医学校で堀内は、21年
間にわたり校長として多くの台湾人医学生を指導し、台湾の医学界を育てていった。卒業生は、日
本が統治していた南洋の島々に赴任し、現地住民の医療に尽力している。

◆人生の大半を台湾の医学発展に捧げる

 台湾における風土病研究に多大な功績を残す一方で、堀内は医学校校長として台湾人学生を愛
し、誠意を持って教育を行った。

 堀内は、台湾人医学生である杜聡明の博士論文を評価し、京都帝大に推薦している。その結果、
杜は台湾で最初の医学博士となった。杜は、戦後に国立台湾大学医学院教授などを歴任した後、私
立高雄医学大学を設立。へき地や先住民族医療に取り組み、戦後台湾医学の発展に大きく寄与して
いる。

 マラリア撲滅のために尽力した台北帝大医学部衛生学教授の森下はのちに大阪大学医学部名誉教
授になる。「台湾の医学史の中で終始主役を続けていた堀内先生を取り上げなければ、台湾医学史
の記述は成り立たない」と述べている。また、台湾文化協会の設立大会に出席するなど、台湾青年
の民族運動にも理解を示した。教え子の韓岩泉医師は「一人の勇敢な開拓者であり、偉大なる教育
者であり、真摯(しんし)な学者である」と堀内を称賛している。

 台湾施政40周年記念博覧会が開催された36年に定年退職を迎えた堀内には教え子から胸像が送ら
れ、医学校の校門脇に設置された。さらに退職に伴い、20年余り住み続けた2000坪(1坪3.3平方
メートル)もある佐久間町(現在の牯嶺街、福州街付近)の総督府官舎を退去し、川端町(現在の
汀州路二段、廈門街付近)の小さな借家に居を移した。医学校を退職した後も赤十字台湾支部病院
の医院長は続け、仕事に情熱を注ぐばかりで豊かとはいえない生活をしていた。それを見かねた医
学校の卒業生が募金を行い、41年に昭和町(現在の青田街、永康街の付近)に住宅を購入して贈呈
した。しかし、住宅は敗戦とともに進駐してきた国民党軍によって接収されている。

 堀内は戦後も帰国せず台湾大学医学院と名前を変えた学校で講義を続けた。ほとんど台湾から出
ることはなく、51年の人生を台湾人の医師養成に捧げた。帰国の際には教え子の台湾人開業医が餞
別(せんべつ)を募ったところ、現在であれば3億円に近い30万円にもなったという。堀内は55年
に82歳で亡くなったが、その際、高雄医学院では教え子たちが集い尊敬と感謝の念を持って追悼会
を催している。堀内はまさに「台湾医学界の父」と呼ぶにふさわしい日本人だった。

参考文献
松井 嘉和『台湾と日本人』(錦正社)
小田 滋『堀内・小田家三代百年の台湾』(近代文芸社)
黄文雄『世界から賞賛される日本人』(徳間書店)
黄文雄『台湾は日本人が作った』(徳間書店)

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