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【メルマガ日台共栄:第3392号】 習近平の包括的対台湾政策「習五項目」を解読する  小笠原 欣幸(東京外語大学准教授)

2019/01/18

>>>>> http://www.ritouki.jp/ ━━━━━━━━━━ 平成31年(2019年) 1月18日】

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1>> 習近平の包括的対台湾政策「習五項目」を解読する  小笠原 欣幸(東京外語大学准教授)
2>> 明日(1月19日)、石川公弘氏が台湾少年工をテーマに「第42回台湾セミナー」
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1>> 習近平の包括的対台湾政策「習五項目」を解読する  小笠原 欣幸(東京外語大学准教授)

 1月2日に習近平が行った台湾を対象とした演説に対し多くの論評が出ている。その全てに目を通
しているわけではないが、台湾の選挙分析では定評のある東京外大の小笠原欣幸(おがさわら・よ
しゆき)准教授による分析は、詳細というより精緻そのものという印象が強い。

 この分析の冒頭に「習近平も台湾向け重要講話を発表することが予想されていた。その時期につ
いて,筆者は2018年4月に『2019年1月1日』という予測を書いた」と記していて、発表の時期を予
測していたことにまず驚かされた。

 また、鄧小平の「台湾同胞に告げる書」(1979年)と「葉九條」(1981年),江沢民の「江八
点」(1995年),胡錦濤の「胡六点」(2008年)と今回の習近平の「習五項目」を詳細に比較検討
していることや、習近平発言の経緯なども綿密に分析している。さらに、「九二共識」(「92年コ
ンセンサス」)についても詳述し、これほど深く「習五項目」を解析した論評は寡聞にして知らない。

 この精緻な分析から導き出された習近平の対台湾政策の展望は説得力に富む。下記に全文を紹介
し、精読を乞う次第だ。

*小笠原欣幸(おがさわら・よしゆき)氏のプロフィールは下記をご参照ください。
 http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/ogasawara/profile.html

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習近平の包括的対台湾政策「習五項目」を解読する
小笠原 欣幸(東京外語大学准教授)
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/ogasawara/analysis/xifivepoints.html

 2019年1月2日,習近平は五項目からなる包括的対台湾政策を発表した。これは,鄧小平時代の
「台湾同胞に告げる書」発表40周年を記念する式典で「重要講話」として述べられた。この「習五
項目」を解読してみたい。

1.発表の時期

 中国共産党の歴代指導者は,任期中に包括的対台湾政策を発表してきた。鄧小平はこの「台湾同
胞に告げる書」(1979年)と「葉九條」(1981年),江沢民は「江八点」(1995年),胡錦濤は
「胡六点」(2008年)である。習近平も台湾向け重要講話を発表することが予想されていた。

 その時期について,筆者は2018年4月に「2019年1月1日」という予測を書いた。その根拠は,江
沢民,胡錦濤と比較しての総書記就任後の年月,党大会からの年月,そして台湾の総統選挙とのタ
イミング,さらには朝鮮半島情勢の危機緩和という諸要因を考慮したものであった。

 具体的には,江沢民と胡錦濤の前例にならうと総書記就任から約6年,再任された党大会から1〜
2年という時期が浮かんだ。また,台湾総統選挙の前か後かでは,選挙の前でしかも選挙戦が始ま
る前という時期が北京の観点からすると発表には適している。そうすると,時期は2018年末から
2019年前半に絞り込まれる。その間に,中国が好む区切りのよい歴史的記念日がちょうどある。そ
れが「台湾同胞に告げる書」発表40周年であった。

 そして朝鮮半島情勢については,「江八点」も「胡六点」も発表の1〜2年前には朝鮮半島情勢が
緊張状態にあったが,それが緩和したタイミングで発表されている。習近平もそれにならう可能性
が高いと考えた。日付については,講話の性質からして家族団らんの象徴的日付の大晦日か元旦の
可能性が高いと考えた。これらの要因を綜合して「習x点」の発表時期を推測したのだが,結果は
その通りになった(12月31日,1月1日,2日の違いは誤差の範囲ということで了解してもらいたい)。

参照:小笠原「『習x点』はいつ発表されるのか?」2018年4月24日小笠原HP掲載
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/ogasawara/analysis/xixpoints.html 

2.講話の特徴

 講話は五点あるが,概念が入り交じっており,五点に分けた意味は薄れている。それでも各項目
をあえて一言でまとめたのが《表1》である。

《表1》「習五項目」の骨子
第一:統一促進と中国の夢
第二:一国二制度と民主協商の呼びかけ
第三:一つの中国原則と台湾独立反対
第四:両岸融合と同等待遇
第五:中華民族アイデンティティ
(出所)新華社配信の習講話原稿を参照し筆者作成

 「習五項目」の文言は,「江八点」や「胡六点」などの過去の文書とこれまでの習演説に出てい
る用語を使っている。驚くべき概念や新たな用語というのはなかった。しかし,重点の置き方に習
近平の特徴が現れている。

 ごく簡単にまとめると,統一への強い意欲を示し「中国の夢」の実現と結びつけたこと,胡錦濤
があまり強調しなかった「一国二制度」を正面から論じ台湾に突きつけたこと,そして,国民党に
対し特定の配慮をしなかったことが,この講話の特徴と言える。

 次に,「習五項目」のいくつかのキーワードを取り上げて習の対台湾政策の思想を分析したい。

1)統一

 統一の主張と含意は,江,胡,習と一貫し変わらない。習近平の特徴は,「中国の夢」という自
身の治国理念を打ち出し,台湾統一をその中に位置づけていることである。「台湾統一 ⇒ 中華民
族の偉大な復興 ⇒ 中国の夢の実現」というロジックである。これは習近平の思い入れの強さを現
しているが,統一ができなければ「中国の夢」も実現しないことになるのでリスクを伴う。また,
その切迫感は在任期間が長くなるほど増していく。

 江沢民は,「早日統一(できるだけ早い統一)」を繰り返し,空回りした。「江八点」では「無
期限に統一を引き延ばすことは見たくない」という言い方であった。胡錦濤は,「早日」を言うの
を控えて,台湾人民に希望を寄せ「両岸関係の平和的発展」をじっくり進めていくというスタンス
であった。

 習近平は,2013年10月に蕭萬長と会見した時に,早くも「(台湾問題の解決を)一代また一代と
先送りはできない」と述べた。この用語が「習五項目」でも使われた。自分の代で解決するという
決意表明であり,習近平の方が胡錦濤よりやはり切迫感が強いと言える。

2)「一国二制度」

 「一国二制度」は今回の講話の目玉として報じられているが,習近平が語るのは初めてではな
い。習が「一国二制度」を台湾向けに初めて語ったのは2014年9月である。胡錦濤は「一国二制
度」が台湾では支持されていないことを考慮して,台湾向けにはこれを語らなかった。「胡六点」
で確かに「一国二制度」が言及されたが,それは,「『平和的統一,一国二制度』は鄧小平の偉大
な構想でありそれに従っていく」と述べただけで,「一国二制度」の中味および統一後の台湾につ
いては言及していない。

 したがって,台湾社会は中国の最高指導者の口から直接「一国二制度」を聞かされることが久し
くなかったのである。習が最初に語ったのは馬政権期で,当時も台湾では反発や不安を招き,馬英
九がそれを強く批判するに至った。習近平は,2017年10月の19回大会でも「一国二制度」に言及し
ている。

 習は今回,統一後の台湾についても言及した。これも一部では新しいことのように言われている
が,習が語った「統一後,台湾の社会制度と生活方式などは充分尊重される」というのは「江八
点」で語られている。習は「一国二制度の台湾方式の探索」と確かに新しい表現を使ったが,「台
湾方式」とは何なのかは語らなかった。むしろ,江沢民の方が詳細に「自分の軍隊を維持し,党,
政,軍などの系統は自己管理してよい」と踏み込んで語っていた。

 習が今回「一国二制度」を正面から主張したことについて,「習近平は台湾の状況をわかってい
ないから」という解説があったが,それは違うであろう。台湾社会で反発がかなり大きくなること
は2014年9月の経験でわかることだ。そうではなく,正面から突きつけ繰り返していくことで,
「一国二制度」への心理的抵抗感を徐々に下げていく策略であろう。台湾を「飼いならす」つもり
ではないか。

 国民党としては,「統一」と「一国二制度」をあまり強調してほしくない。それに構わず突き進
むのが習近平流で,ここが胡錦濤との違いである。表面的には江沢民と似ている。しかし,江沢民
時代は台湾の反発を押し切るだけの実力がなかった。習近平は,台湾人の反発を計算に入れ,なお
かつそれを押し切る硬軟両様の手段を用意している。ここが江沢民時代との違いである。

3)武力行使

 「中国人は中国人を攻撃しない」,「武力使用の放棄は約束しない」の2つの用語は,今回多く
の国際メディアが注目して報道したので,これも新たな表現かと思った人がいるかもしれない。し
かし,これら2つの用語は,共に「江八点」で語られている。使い方も同じで,武力行使は「外国
勢力の干渉と台湾独立の活動に向けたもの」という表現も「江八点」と同じである。一方,「胡六
点」ではこれらの用語は使われていない。胡錦濤は「武力」という用語が台湾を刺激することを恐
れ,避けたのである。

4)「両岸関係の平和的発展」

 「両岸関係の平和的発展」は胡錦濤政権が概念化したもので,江時代には存在しなかった用語で
ある。「両岸関係の平和的発展」は「胡六点」で,統一という目標と具体的政策である手段とをつ
なぐプロセスとして重要な位置づけを付与された。しかし,「習五項目」では,言及はされたが,
その文脈はあまり重要性がない。中味が消えて言葉だけが残った感じだ。

 胡時代は「両岸関係の平和的発展」というそれ自体に意味を付与されたプロセスを進めるという
ことで台湾に気前よく利益を提供した。もちろん,台湾の民意が統一に向かうことを期待してのこ
とであるが,「我々はいつまでも待つ」と語るおうようさがあった。

 比喩的に言えば,胡時代は台湾側に「ただ飯食い」をさせていた。習近平は,それではいつに
なっても統一に近づかないので「ただ飯食いは許さない」に切り替えた。胡錦濤時代は国民党に
とって居心地のよい暖かさがあったが,習近平はそれが長く続く期待に冷水を浴びせかけたのである。

5)使われなかったキーワード

 一方,胡錦濤が使ったのに習近平が使わなかったキーワードもある。「胡六点」で胡錦濤は,
「台湾同胞が郷土を愛する台湾意識は『台独』意識とは異なる」と述べた。これは,筆者が使って
いる分析枠組み,つまり,「台湾アイデンティティ」と「台湾ナショナリズム」を区別する分析枠
組みと同じである。中国の最高指導者が「台湾意識」と「台独意識」を区別し「台湾意識」に肯定
的に言及したのは,後にも先にもこの1回だけである。

 「台湾人民に希望を寄せる」は胡時代のキーワードである。「習五項目」では,言及はされた
が,「胡六点」ほどの熱意は感じられない文脈である。胡は「台湾当局にも希望を寄せる」と述べ
たが,習は当然それは言わない。習は代わりに「心霊契合(両岸同胞が心を通い合わせる)」を好
んで使っている。

 「習五項目」は「台湾同胞に告げる書」発表40周年を記念して出されたのだから,「40年」とい
うのがキーワードになるハズである。しかし,習は講話の冒頭で1回だけ「発表40周年」に触れた
だけで,後は「70年来」「70年来」と「70」を7回使った。「胡六点」は同書発表30周年だったの
で,「30年」を7回使っている。「40年」であれば鄧小平の改革開放が始まり「平和的統一,一国
二制度」の方針が出されてからの連続性となるが,「70年」であれば毛沢東の武力による「台湾解
放」の方針の時期から連続してとらえることになる。

 習近平も「平和的統一,一国二制度」を受け継いでいるのだから「この40年来」と述べるのが適
当なハズである。それをせず「この70年来」とするのは,鄧小平を超えて毛沢東と同列になること
を意識してのことなのか,あるいは何か別の意味を持つのか,筆者は現時点ではわからない。いず
れ中国の学者に聞いてみたい。

3.量的分析

 ここまで,「習五項目」のキーワードに注目しその特徴を分析してきたが,キーワードを数量的
にも把握したい。キーワードの出現回数を「江八点」「胡六点」と比較して《表2》に整理した。

 まず,本文の字数は,「江八点」3382字,「胡六点」5003字,「習五項目」4237字で,「習五項
目」は「江八点」より長いが「胡六点」より短い。その中で,「統一」という用語の出現回数は
「江八点」33回,「胡六点」27回,「習五項目」46回で,「習」が圧倒的に多い。「胡六点」より
本文が短いのに出現回数は多いので,その頻度はかなりのものだ。講話を聴いた人は習が「統一」
を強調していると感じたであろうが,それは量的に裏づけられる。

 次に,「一国両制」の出現回数については,「江」3回,「胡」3回,「習」7回で,やはり
「習」が最も多い。「一個中国」も7回,8回,12回で,同様である。「民族」は,「江」10回,
「胡」21回,「習」34回で,やはり「習」が最も多い。これは,江,胡,習の時代ごとに中国ナ
ショナリズムが強まっている表れと見ることができる。

 江沢民時代の後に登場した用語である「両岸関係の平和的発展」と「92年コンセンサス」につい
てはどうであろうか。「両岸関係の平和的発展」は「胡」で25回出現した。それが「習」では7回
しかない。これは胡が重視したが習はそれほど重視していない概念であることはすでに論じたが,
それが量的にも表れている。

 「92年コンセンサス」は「胡」2回,「習」2回で量的には同じであるが,後で論じるように使わ
れ方が全く異なる。「台湾人民に希望を寄せる」で使われる「寄希望」は,「江」0回,「胡」4
回,「習」1回であった。胡錦濤時代はこれを強調していたことが,量的にも表れている。

 「武力使用の放棄は約束しない」の文脈で使われる「武力」の出現回数は,「江」3回,「胡」0
回,「習」1回であった。「武力使用の放棄は約束しない」の話はすでに取り上げ,習の言及の仕
方は江と同じであることを指摘した。3回であろうと1回であろうと「江」と「習」は内容的に同じ
であるが,「胡」0回との違いはやはり台湾の受け止め方に影響を与えると言える。 

《表2》「江八点」「胡六点」「習五項目」におけるキーワード出現回数
(出所)新華社配信の各講話原稿を参照し筆者作成
【編集部註:小笠原氏のHPをご参照ください】
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/ogasawara/analysis/xifivepoints.html

4.「92年コンセンサス」の定義

 「92年コンセンサス」(中国語は「九二共識」)について,胡錦濤はできるだけ定義に触れず,
単に「九二共識」とだけ語ることが多かった。「胡六点」でも「1992年に両岸は『九二共識』を達
成した」,「『九二共識』の基礎の上で両岸の協議を回復することができた」と述べただけであっ
た。これは,定義を語れば国民党との違いが浮き彫りになるので,それを避けたのは国民党への配
慮と言える。

 習近平は,就任当初は「92年コンセンサス」への言及自体が少なかったが,2015年3月に「その
核心は大陸と台湾が共に一つの中国に属することだ」という定義を付けた。そしてそれは,2015年
11月の馬英九との会談で「『92年コンセンサス』は一つの中国原則を体現する」へと変化し,2017
年10月の19回大会で「一つの中国原則を体現する『92年コンセンサス』」という用語が確立した。

 ここまでの段階で,胡時代は比較的ゆるかった「92年コンセンサス」の縛りが習時代に強められ
たことがわかる。「92年コンセンサス」が単独で使われる場合は,あいまいさを内包しうる政治的
概念となる。そもそも1992年の交渉過程で,何の合意文書も共同声明もできていない。だから「合
意」ではなく「コンセンサス」という用語が使われたのである(日本メディアは,字数が増えるこ
とは嫌であろうが,「92年合意」ではなく,正確に「92年コンセンサス」と書いてほしい)。

 ところが,中国の言う「一つの中国原則」という定義を使うと,あいまいさを内包という論理が
消えてしまう。「一つの中国原則」は,「中国は一つ,台湾は中国の不可分の一部,中華人民共和
国は中国を代表する唯一の合法政府」という明確な原則である。これは,国際条約で使われる法的
概念であり,国連から台湾を排除する根拠として使われている。これは中国共産党の台湾問題に対
する一貫した原則であり,「92年コンセンサス」とは「一つの中国原則」を双方が認めたことだと
いう中国側の認識も一貫している。

 しかし,胡錦濤は,国民党との連携を進めるため,台湾向けにはその定義を正面から語るのを控
えるという配慮を示した。習近平はその配慮をやめたのである。その意図は,国民党が主張する
「92年コンセンサス」イコール「一中各表」という定義の「各表」を放棄させることにある。

 理由は,国民党の「一中各表」のロジックには,「こちらが言う『一中』とは中華民国であり,
それを言い続けることで中共主導の統一を防ぐことができる」という含意があり,北京の観点から
は,その解釈を許していては,統一はいつになっても実現しない障害と見なされるからである。そ
れは『中国評論』に掲載される中国の学者らの論述で明らかである。

 今回,「海峡両岸は共に一つの中国に属し,共同で国家統一を目指す努力をするという『92年コ
ンセンサス』」という表現が使われた。中国語の原文は“海峡两岸同属一个中国,共同努力?求国
家?一”的“九二共?”である。「海峡両岸は共に一つの中国に属し」は習がすでに使用している
定義であるが,「共同で統一を目指す努力をする」という表現が新たに加わった。これは,1992年
に中台双方の窓口機関でやり取りされた文書にある表現で,その後の中国側の「92年コンセンサ
ス」関連文書にも頻出しているので珍しくはない。しかし,わざわざ「統一を目指す努力をする」
と加えるのはダメ押しのように見える。

 なぜ,今回それを加えたのであろうか? すでに見たように,「92年コンセンサス」の定義は習
時代になってすでにきつい縛りになっている。蔡政権はそもそも「92年コンセンサス」を受け入れ
ていないのだから,蔡政権に向けて定義をきつくしても意味はない。また,広く台湾に向けて「92
年コンセンサス」をアピールしたいのであれば,やはりここでダメ押しをする必要はない。これ
は,国民党向けのダメ押し,具体的には国民党の「一中各表」に対する圧力である。

5.国民党を揺さぶる

 「習五項目」が発表されるやいなや,蔡総統はそれを厳しく批判し拒否する談話を発表した。一
方,国民党は困惑している。この状況を見て台湾メディアの一部の評論は,「北京は台湾の状況を
理解していない」という趣旨の解説をしているが,それは間違いである。習近平は国民党が苦境に
陥ることをわかっていて,ここで圧力を強化し,「各表」を放棄させようとしているのである。こ
れも『中国評論』が社論で呉敦義主席の「一中各表」論批判を強めていることが証左となる。

 ここで出る次なる疑問は,昨年11月の地方選挙で勝利した国民党への援護射撃はしないのか? 
であろう。これは,「習五項目」が対台湾政策の「綱領」と位置づけられていることに注意する必
要がある。「習五項目」はおそらく2017年の19回大会の頃から準備作業が始まって,昨年の夏頃に
は骨格は固まっていたハズだ。台湾の選挙結果を受けて書き換える時間はあったが,そうする必要
はなかったのであろう。

 「習五項目」が「綱領」であるからには,具体的方策は別途打ち出される。2月初頭には,中国
全国の台湾関係部門の責任者を集めて「対台湾工作会議」が開催される。これは毎年恒例の非公開
会議で,個別政策,細かい手順など具体策が下達され,意思統一が図られる。この会議は,数行の
公式発表と限られた報道があるだけで,内容については推測するしかない。

 今年の会議では,おそらく,国民党が勝った県市への具体的支援策が議論されるであろう。例え
ば,高雄市への中国人観光客の差し向け,高雄市の農産物・養殖魚の買い付け,関連企業を通じて
の高雄市への投資などについて,割り振りや時期などが決められるであろう。

 これらが春節後に実行されていくことで,国民党には非常にありがたい支援となるであろう。そ
して,県市レベルではいちいち習の「92年コンセンサス」の定義に反論することはしないであろ
う。すでに南投県の林明溱県長は「一中各表を語る必要はない」と述べている。中国はこのチャン
スを効果的に使ってくるであろう。

参照:「南投縣長林明溱:九二共識 不要再提一中各表」『中國時報』2019年01月09日
https://www.chinatimes.com/realtimenews/20190109002879-260407 

 適切ではない比喩をあえて使えばこのようになる。この揺さぶり工作は,一発なぐっておいて
「大丈夫か,痛くなかったか」と優しく声をかけて痛み止めを渡すようなやり方だ。これを何回か
やられると逆らえなくなる。これは毛沢東が政敵を服従させたやり方によく似ている。

まとめ

 「習五項目」後の習近平の対台湾政策は,引き続き「ハードパワーを使っての台湾威嚇・抑え込
み」と「ソフトパワーを使っての台湾取り込み」のミックスであろう。これは,海外から見ると
「北風」と「太陽」を同時に進行させることで,効果が相殺されるのではないかという疑問があっ
たが,習近平の側は,「短期的に反発があっても長期的に圧倒的な力を見せつけることによって台
湾人の士気を挫くことができると考えている」というのが一つの答えであった。それが今回の講話
でより明確になったと言える。「自分は大国,いちいち台湾の受け止め方を気にする必要はない」
という考えであろう。林泉忠氏はこれを習近平の「実力主義」と呼んでいる。

 今年は台湾総統選挙が始まるので,習近平の思惑通りに事が進むとは思わないが,「習五項目」
をうけて台湾人取り込み工作がどのような進展をみせるのか,また,国民党への揺さぶり工作がど
のような進展を見せるのか注視する必要がある。

                                   (2019年1月13日)

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2>> 明日(1月19日)、石川公弘氏が台湾少年工をテーマに「第42回台湾セミナー」

 昭和18年(1943年)5月から翌年5月までの1年の間に、労働力不足を補うため、8400人余の台湾
の少年たちが難関の選抜試験を勝ち抜き、海軍軍属として日本本土に渡ってきました。平均年齢
14、5歳の彼らは「台湾少年工」と呼ばれ、神奈川県高座郡にあった高座海軍工廠を母廠に全国の
航空機工場へ派遣され、「雷電」や「零戦」など海軍機の生産と整備に従事しました。その高い技
術と仕事への忠誠心は各地で称賛されました。

 平成4年(1992年)5月、大和市役所を訪問した台湾高座会の方々をたまたま応接されたのは当
時、同市議会議長だった石川公弘(いしかわ・きみひろ)氏。この偶然の出会いが翌年6月9日に開
催の「台湾高座会留日50周年歓迎大会」として実現し、台湾から実に1400名もの台湾少年工が来日
しました。石川氏はこのときから昨年10月の75周年歓迎大会まで実行委員長として臨み、台湾高座
会との交流の中心人物であり生き証人となります。

 今回のセミナーでは、台湾少年工の歴史的意義とともに、25年に及ぶ交流の足跡や今春の出版を
予定している『台湾少年工75周年記念誌』についてお話しいただきます。

 セミナー終了後は、講師を囲んで懇親会を開きます。ご参加の方は、申し込みフォーム、メー
ル、FAXにてお申し込み下さい。

                     記

◆日 時:平成31年(2019年)1月19日(土) 午後2時30分〜4時30分(2時開場)

◆会 場:文京区民センター 3階 3-D会議室

     東京都文京区本郷 4-15-14 TEL:03-3814-6731
     【交通】 都営地下鉄:三田線・大江戸線 春日駅 A2出口 徒歩2分
          東京メトロ:丸ノ内線・南北線 後楽園駅 4b出口 徒歩5分
                   JR総武線 水道橋駅 東口 徒歩10分

◆演 題:台湾高座会との交流と『台湾少年工75周年記念誌』

◆講 師:石川公弘氏(高座日台交流の会会長)

     [いしかわ・きみひろ] 昭和9年(1934年)5月、神奈川県生まれ。同18年、海軍工廠寄
     宿舎舎監に転じた父と大和へ。早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了。東京経済大
     学講師、日本ビジネスペンスクール取締役を兼務しながら大和市議会議員を28年務め
     る。市議会議長時代に元台湾少年工と再会、台湾高座会留日50周年、60周年、70周年、
     75周年の歓迎大会実行委員長。主な著書に『二つの祖国を生きた台湾少年工』など。共
     著に『台湾少年工と第二の故郷』。日台稲門会顧問、日本李登輝友の会副会長。

◆参加費:1,500円(会員) 2,000円(一般) 1,000円(学生)
     *当日ご入会の方は会員扱い

◆申込み:申込フォーム、メール、FAXにて。 *1月18日(金) 締切

     申込みフォーム:https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/m85qxmzjhqch
     E-mail:info@ritouki.jp  FAX:03-3868-2101

◆懇親会:講師を囲んで会場の近くにて [参加費=3,000円 学生:2,000円]

◆主 催:日本李登輝友の会
 〒113-0033 東京都文京区本郷2-36-9 西ビル2A
 TEL:03-3868-2111 FAX:03-3868-2101
 E-mail:info@ritouki.jp
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2019年1月19日「第42回台湾セミナー」申込書

・ご氏名(ふりがな):
・メールアドレス:
・性 別:男性・女性
・ご住所
・お電話
・会 籍: 会員 ・ 一般 ・ 入会希望
・懇親会: 参加 ・ 不参加

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【日本李登輝友の会:取扱い本・DVDなど】 内容紹介 ⇒ http://www.ritouki.jp/

*ご案内の詳細は本会ホームページをご覧ください。

● 台湾フルーツビール・台湾ビールお申し込みフォーム
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/rfdavoadkuze

*台湾ビール(缶)は在庫が少なく、お申し込みの受付は卸元に在庫を確認してからご連絡しますの
 で、お振り込みは確認後にお願いします。【2016年12月8日】

● 美味しい台湾産食品お申し込みフォーム【常時受付】
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex

*台湾の高級調味料XO醤は在庫切れのためお申し込みを中止しています。悪しからずご了承のほ
 どお願いします。入荷予定が分かり次第、本誌やホームページでお伝えします。(2019年1月9日)

● 台湾土産の定番パイナップルケーキとマンゴーケーキのお申し込み【常時受付】
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex
 *詳細は本会HP ⇒ http://www.ritouki.jp/index.php/info/2018pineapplecake/

*沖縄県や伊豆諸島を含む一部離島への送料は、宅配便の都合により、恐縮ですが1件につき
 1,000円(税込)を別途ご負担いただきます。【2014年11月14日】

*パイナップルケーキ・マンゴーケーキを同一先へ一緒にお届けの場合、送料は10箱まで600円。

・奇美食品の「鳳梨酥」「芒果酥」 2,900円+送料600円(共に税込、常温便)
 [同一先へお届けの場合、10箱まで600円]

・最高級珍味「台湾産天然カラスミ」 4,160円+送料700円(共に税込、冷蔵便)
 [同一先へお届けの場合、10枚まで700円]

● 書籍お申し込みフォーム
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px

・劉嘉雨著『僕たちが零戦をつくった─台湾少年工の手記』
・渡辺利夫著『決定版・脱亜論─今こそ明治維新のリアリズムに学べ』
・呉密察(國史館館長)監修『台湾史小事典』(第三版)
・李登輝・浜田宏一著『日台IoT同盟』 *在庫僅少
・王育徳著『台湾─苦悶するその歴史』(英訳版) *在庫僅少
・浅野和生編著『1895-1945 日本統治下の台湾』
・王明理著『詩集・故郷のひまわり』
・李登輝著『李登輝より日本へ 贈る言葉』 *在庫僅少
・宗像隆幸・趙天徳編訳『台湾独立建国運動の指導者 黄昭堂』
・林建良著『中国ガン─台湾人医師の処方箋』 *在庫僅少
・盧千恵著『フォルモサ便り』(日文・漢文併載)
・黄文雄著『哲人政治家 李登輝の原点』
・李筱峰著・蕭錦文訳『二二八事件の真相』

● 台湾・友愛グループ『友愛』お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/hevw09gfk1vr

*第1号〜第15号(最新刊)まですべてそろいました。【2017年6月8日】

● 映画DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/0uhrwefal5za

・『海の彼方』
・『台湾萬歳』
・『湾生回家』
・『KANO 1931海の向こうの甲子園』
・『台湾アイデンティティー』 
・『台湾アイデンティティー』+『台湾人生』ツインパック
・『セデック・バレ』(豪華版)
・『セデック・バレ』(通常版)
・『海角七号 君想う、国境の南』
・『台湾人生』

● 講演会DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/fmj997u85wa3

・2018年 李登輝元総統沖縄ご訪問(2018年6月23日・24日)*new
・2014年 李登輝元総統ご来日(2014年9月19日〜25日)
・片倉佳史先生講演録「今こそ考えたい、日本と台湾の絆」(2013年12月23日)
・渡部昇一先生講演録「集団的自衛権の確立と台湾」(2013年3月24日)
・野口健先生講演録「台湾からの再出発」(2010年12月23日)
・許世楷駐日代表ご夫妻送別会(2008年6月1日)
・2007年 李登輝前総統来日特集「奥の細道」探訪の旅(2007年5月30日〜6月10日)
・2004年 李登輝前総統来日特集(2004年12月27日〜2005年1月2日)
・許世楷先生講演録「台湾の現状と日台関係の展望」(2005年4月3日)
・盧千恵先生講演録「私と世界人権宣言─深い日本との関わり」(2004年12月23日)
・許世楷新駐日代表歓迎会(2004年7月18日)
・平成15年 日台共栄の夕べ(2003年11月30日)
・中嶋嶺雄先生講演録「台湾の将来と日本」(2003年6月1日)
・日本李登輝友の会設立総会(2002年12月15日)

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◆日本李登輝友の会「入会のご案内」

・入会案内:http://www.ritouki.jp/index.php/guidance/
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  • 下津井よいとこ2019/01/19

    皇室ゆかりの美術 宮殿を彩った日本画家……1月20日迄、山種美術館にて



    「明治の日」実現 総蹶起集会……1月29日午後6時から、憲政記念館講堂にて



    亀戸天神社鷽替え神事……1月24日、25日

    湯島天神鷽替え神事……1月25日

     (梅祭りは2月8日からです。)

    神田明神だいこく祭……1月26日、27日

    大阪天満宮・初天神梅花祭、鷽替え神事……1月24日、25日

    大阪天満宮・合格祈願通り抜け参拝……1月24日、25日、2月2日、25日、3月9日

     (曾根崎の露天神社(所謂「お初天神」)も試験合格にご利益が多いそうです。)

    (京阪神地方には、北野天満宮、大阪天満宮、露天神社などの他、福島天満宮、長洲天満神社、尼崎ゑびす神社など菅原道真ゆかりの神社が多くあります。これから梅の花が馥郁と薫る季節が近づいてきます。)

    「神戸がいただいた支援、そして交流」……1月25日迄、神戸市長田区のふたば学舎にて

     (阪神淡路大震災での全国各地からの神戸市への支援とその後の交流を振り返る企画展です。産経新聞西日本版に記事が出ていました。ネット上でも読めます。)

    「博物館に初もうで イノシシ 勢いのある年に」……1月27日迄、東京国立博物館にて

     (特集展示「大判と小判」は2月3日迄です。)

    「明治の教育と博物学 こどもたちが学び楽しんだ、自然をめぐるモノづくし」……1月27日迄、玉川大学教育博物館にて



    「銀座古書の市(冒険にでよう、あの頃の日本へ)」……1月21日迄、松屋銀座にて

     (専門性が高い各古書店が選りすぐりの書物、書画を出品します。貴重な品も見るだけならただですので、覗いてみると楽しいと思います。)

    「三省堂書店池袋本店・古本まつり(古書と歩む新しい時代の幕開け)」……2月5日から12日迄、西武池袋本店にて

     (一般古書から資料や書画に至る迄、色々と出品販売されます。)

    「水の都の古本展」……3月12日から15日迄、大阪市中央公会堂(中之島公会堂)にて(予定)



    (日時等はホームページなどで再度御確認の上、お出かけ下さるようお願いします。)