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【メルマガ日台共栄:第2572号】 台湾総統選挙をめぐる3つの懸念  澁谷 司(拓殖大学海外事情研究所教授)

2016/01/13

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1>> 台湾総統選挙をめぐる3つの懸念  澁谷 司(拓殖大学海外事情研究所教授)
2>> 台湾選挙の焦点はどこか─総統選と立法委員選の前と後  アンディ・チャン
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1>> 台湾総統選挙をめぐる3つの懸念  澁谷 司(拓殖大学海外事情研究所教授)

 総統選と立法委員選の投開票が行われる1月16日まで4日となった12日、台湾の選挙分析では定評
のある拓殖大学海外事情研究所教授で日本戦略研究フォーラム政策提言委員の澁谷司氏が「3つの
懸念」を表明した。

 3つの懸念の1つ目として「本当に何事もなく、総統選挙が行われるかどうか」、2つ目は「民進
党(および民進党系)が総統選挙はもとより、立法委員選挙でも過半数(113議席中、57議席以
上)を制するか否か」、3つ目は「無事に、5月20日、新総統就任式が行われるのか」を指摘してい
る。

 いずれも正鵠を射ていると思われる。本誌でも指摘してきたように、最悪は総統選の立候補者が
暗殺されるような事態だ。澁谷氏は2004年の総統選前日に起きた、陳水扁総統と呂秀蓮副総統への
狙撃事件を例に挙げている。

 本誌で紹介したように、黄文雄氏も昨年11月26日の「正論の会」で総統選立候補者の暗殺につい
て「国民党の朱立倫主席を暗殺する可能性がある。暗殺すれば選挙中止の口実になる」と指摘し、
台湾在住ジャーナリストの迫田勝敏氏も「立候補者が暗殺されるなどの死亡事故が起これば選挙は
無効となり、馬英九総統は秩序を取り戻すという理由を掲げて戒厳令を布いて憲法を停止し、総統
に留まる可能性もある」と指摘している。

 陳水扁狙撃事件ばかりではない。2010年11月の統一地方選挙のときも、投票日前日の11月26日、
新北市議選候補者の選挙応援に来ていた連勝文氏(連戦・国民党名誉主席の長男)が拳銃で撃たれ
るという銃撃事件が起こっている。

 2つ目の少数与党というネジレ現象への懸念もさることながら、やはり問題は、蔡英文候補が総
統に当選する可能性がすこぶる高い現在、総統就任式までの4ヵ月という長い空白期間に、総統の
馬英九が中国から軍隊を招き寄せるような状況を作る恐れがあることだ。

 この懸念はけっして絵空事ではない。2012年の前回総統選挙で政権交代はなかったが、今回はそ
の可能性が高い。政権交代が行われるまで4ヵ月もの空白期間を迎えるのは初めての事態となり、
この間に、選挙結果を覆す重大な政治事件が起こる可能性を否定できないのだ。

 前回総統選挙のときの2011年12月15日、国際法学者の彭明敏氏が主席、李登輝元総統が名誉主席
に就任し、台湾に「台湾公正選挙国際委員会(ICFET)」が発足している。日本からはジャーナリ
ストの櫻井よしこ氏や小池百合子・衆議院議員も加盟している。

 今回もすでに台湾公正選挙国際委員会が発動していて、1月12日、日本からは本会副会長でもあ
る田久保忠衛・杏林大学名誉教授などが台湾公正選挙国際委員会メンバーとして訪台している。

 澁谷氏が指摘する「3つの懸念」を味読されたい。

               ◇    ◇    ◇

澁谷 司(しぶや つかさ)
昭和28年(1953年)、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修
了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。2004〜05
年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011〜2014年、拓殖大学海外事情研究所
附属華僑研究センター長。現在、同大学海外事情研究所教授。専門は、現代中国政治、中台関係
論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人
が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)等多数。

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台湾総統選挙をめぐる3つの懸念  澁谷司(政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授)
【日本戦略研究フォーラム「澁谷司の『チャイナ・ウォッチ』」:2015年1月12日】
http://www.jfss.gr.jp/news/shibuya/20160112.htm

 2016年1月16日(土)、台湾では総統(大統領)選挙と立法委員選挙(1院制。日本の衆議院選挙
に相当)が同時に実施される。特に、前者は「第3次政権交代」が起こるかどうか、内外から注目
を浴びている。 

 1945年、日本の敗戦以来55年間、台湾は国民党の支配下にあった。1996年、李登輝(本省人=早
い時期に渡台した漢民族の末裔)政権下、台湾初の総統民選が実施されている。それまでは、台湾
住民が国民大会代表を選出し、その代表(国民大会)が正副総統を選ぶ間接選挙だった。 

 「第1次政権交代」は2000年に起きた。同年、野党・民進党は、陳水扁(本省人)候補を擁立
し、初めて国民党から政権を奪取した。これが中華世界における初めての「平和的政権交代」であ
る。なお、2004年、陳水扁総統は再選されている。 

 2008年、いったん下野した国民党は、馬英九(外省人=1949年、蔣介石と共に渡台した「在台中
国人」及び、その2世・3世)候補を立て、再び政権を取り戻した。「第2次政権交代」である。そ
して、前回、2012年、馬総統は再選された。 

 今回、野党・民進党は蔡英文候補を擁して、政権奪還を目指している。他方、与党・国民党は朱
立倫主席(外省人と本省人のハーフ)を候補として擁立(昨年10月、突然、洪秀柱総統候補が引き
ずり降ろされている)した。また、親民党は宋楚瑜主席(外省人)が立候補している。各種世論調
査によれば、現時点で、蔡候補の当選が確実視されている。 

 ただし、今度の総統選挙には3つの懸念材料がある。 

 第1に、本当に何事もなく、総統選挙が行われるかどうかである。 

 2004年、総統選前日、陳水扁総統と呂秀蓮副総統が台南で選挙遊説中、暴漢に狙撃された。銃弾
は車に乗っていた正副総統に命中している。幸いに2人とも命には別条なく、翌日、無事、選挙が
行われた。 

 翌日、陳水扁総統が、国民党の連戦総統候補(副総統候補は親民党の宋楚瑜)を3万票弱で辛う
じて振り切っている。もしも、その銃撃事件で正副総統が命を落としていたら、選挙は延期されて
いた。 

 今回、立候補している3ペアの誰かが暗殺されたならば、戒厳令が敷かれ、選挙は延期されるだ
ろう。その場合、すでに“レイムダック化”している馬英九政権が延命する。 

 第2に、民進党(および民進党系)が総統選挙はもとより、立法委員選挙でも過半数(113議席
中、57議席以上)を制するか否かである。 

 1949年、国民党が渡台して以来、未だかつて“ブルー陣営”(国民党及び国民党系)が立法院で
少数になった事はない。ただ、今度ばかりは“ブルー陣営”が初めて少数派に転落する恐れがあ
る。 

 逆に、もし“グリーン陣営”(民進党及び民進党系)が立法委員選挙で過半数割れしたならば、
陳水扁政権下同様、蔡英文新総統の政権運営がきわめて困難になるだろう。立法院で法案が通らな
いからである。 

 第3に、仮に、順調に総統選挙と立法委員選挙が行われ、両選挙で民進党(および民進党系)が
勝利したとしよう。だが、5月20日の新総統就任式まで4ヶ月あまりもある(新立法院<新国会>は
2月1日に召集される)。 

 昨年11月、突如、シンガポールで習近平中国国家主席と馬英九台湾総統の間で、会談が開かれた
ことは記憶に新しい。ひょっとすると、習馬会談で“平和的”中台統一の“密約”が交わされた公
算がある。 

 現在の習近平体制は、政治・経済・社会のいずれを取っても行き詰まっている。そこで、習主席
が求心力を高めるため、台湾との統一を目指しても不思議ではない。一方、馬英九は根っからの
「中台統一派」であり、習近平とは両岸統一の志は一緒である(ちなみに、台湾住民の約80%以上
は、当面の中台統一に反対している)。 

 従って、たとえ蔡英文が当選したとしても、その権力移譲期間(空白期間)に、中国軍が台湾海
峡を渡る可能性を排除できないだろう(実際、昨年7月、中国共産党は、内モンゴルで台湾総統府
に模した建物を建築し、そこで急襲演習を行っている)。 

 その時、馬英九政権は(台湾軍を動かさず)中国軍を“歓迎”するかもしれない。すると、米軍
は「台湾関係法」(国内法)による台湾防衛が不可能となる。 

 同法は、中国の台湾侵攻により台湾住民の生命・財産が脅かされた時、米国は台湾にあらゆる援
助を行うと記している。けれども、同法は“平和的”中台統一に関しては、何ら効力を持たない。
そのため、オバマ政権は両岸の“平和的”統一を看過せざるを得ないだろう(ただし、“グリーン
陣営”が島内でゲリラ戦を展開すれば、話は別である)。 

 果たして、無事に、5月20日、新総統就任式が行われるのか。目下、台湾は重大な岐路に立たさ
れている。

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2>> 台湾選挙の焦点はどこか─総統選と立法委員選の前と後  アンディ・チャン

 台湾の総統選と立法委員選への懸念については、先に澁谷司氏の見解をご紹介したが、米国在住
のアンディ・チャン氏もまた傾聴すべきポイントを指摘している。

 最大の焦点は「民進党の得票よりも国民党が立法院(国会)で3分の1議席を確保できるか」だと
いう。なぜなら「国民党が3分の1の37議席以上取れたら重要法案の結果を左右するだけの票を維持
できる」からだと指摘する。

 次のポイントは「民進党が過半数議席を取れるか、ヒマワリ学生の時代力量党が何議席を取れる
か、宋楚瑜の親民党と黄昆輝の台聯党が生き残れるか」だという。

 アンディ氏はアメリカと中国の「選挙干渉」にも言及し、また、選挙後の新政権が取り組むべき
こととして、第1に司法改革を挙げ、次が外交と軍隊の改革だとしている。

 原題は「台湾選挙の前と後」だったが、少し茫漠とした感のあるタイトルなので「台湾選挙の焦
点はどこか─総統選と立法委員選の前と後」と改題したことをお断りしたい。

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台湾選挙の前と後  Andy Chang
【Andyの国際ニュース解説No.576:2016年1月11日】[AC論説] No.576  

 台湾の選挙はあと5日となった。民進党の勝利はほぼ確実と言うが、民進党の得票よりも国民党
が立法院(国会)で3分の1議席を確保できるかが最大の焦点となる。次の焦点は民進党が過半数議
席を取れるか、ヒマワリ学生の時代力量党が何議席を取れるか、宋楚瑜の親民党と黄昆輝の台聯党
が生き残れるか、などである。

 日本やアメリカから新聞記者が選挙を見に行くそうだが、投票前に注目すべきことと、投票の結
果が台湾にどのような変化をもたらすか、注目すべき事項について意見を述べてみたい。

●戦い済んで首実検

 民意調査で蔡英文が20%以上リードして、ラストスパートになってもほとんど変わりがないから
蔡英文当選は間違いないだろう。注目すべきは蔡英文の得票が400万票を超えるか、つまり投票総
数を1200万票と見積もって蔡英文800万対朱立倫400万票となるかにある。第3候補の宋楚瑜は100万
票を取るのが目標で、100万票取れば親民党は生き残れるだろう。

 次に立法委員選挙だが、立法院の議席は総数113だから過半数は57、国民党が3分の1の37議席以
上取れたら重要法案の結果を左右するだけの票を維持できる。国民党はこれまで濁水渓以北で絶対
優勢だったが、今回は桃園市、新北市も台北市でも苦戦している。

 台中、新竹、苗栗の国民党議員も落選が多いだろう。南部はすでに民進党と独立主張を表明する
野党が取ると言われているから、濁水渓以北の国民党候補の落選が大きな話題となる。国民党の大
物が何人落選するか、戦い済んだら首実検である。

●外国の干渉

 外国の干渉があるとすればアメリカと中国しかない。中国はいろいろな高圧手段で国民党を擁護
する、中国にいる台湾商人に金銭や商業利益などで国民党に投票するように要求する。選挙で中国
側がどのような手段を使うかに注意したい。

 2年前の総合選挙(編集部註:2011年11月29日の統一地方選挙「九合一選挙」)で国民党が惨敗
し、台湾人民が反中国、反国民党であることが明らかになり、選挙前の民意調査で国民党が苦戦し
ているので中国の干渉は逆効果だが、どんな手段を使うか注意したい。

 アメリカはいつも台湾の選挙に干渉してきた。国民党は「92共識」を中台関係の要諦と主張して
きたが、92年の中台協議で合意はなかったし文書も存在しない。しかし国民党側は共識があったと
主張し、蔡英文が政権を取れば共識を否定する、中台関係が緊張すると宣伝する。事実として92共
識は無かったことは衆知のことだから今回の選挙で92共識を云々するのはマイナス効果しかない。

 アメリカの元AIT(米国在台湾協会)台北所長・ダグラス・パール(Douglas Paal)は2012年
の総統選挙の時に台湾を訪問し、投票の2日前に「902共識は中台関係の安定に役立ち、中台両側が
受け入れた妥協方式であり、もしも蔡英文が当選した後で92共識を否定するなら中台関係が緊張す
るかもしれない」と述べて馬英九支持を表明した。

 ダグラス・パールはもともと存在しない「92共識」を、存在する、重要である、蔡英文が当選す
れば中台関係が壊れると言ったのである。このため蔡英文は89万票の僅差で落選した。

 蔡英文は去年夏に訪米して国務省、国防部などを歴訪した。アメリカの反応はかなり良かったの
で、今回はあからさまな干渉はしないと思われる。馬英九の中国接近、中国の南シナ海の勝手な建
設でアメリカはアジア回帰を宣言した。台湾の選挙には干渉せず静観するだろう。また蔡英文も
「現状維持」を表明してアメリカが反感を持たないよう注意している。但し、選挙前にアメリカは
誰かを派遣して訪台することは考えられるし、訪台したあとどのような意見発表をするか、特に注
意すべきである。

●選挙の後の予測

 選挙は関ヶ原の戦いと同じく、洞ヶ峠の裏切もあるし投票前の形勢逆転もあるから決して楽観で
きない。選挙が終われば中国、アメリカ、日本などが台湾で誕生した新政権との関係について意見
の発表がある。またアジア諸国、世界各国もいろいろな発表があり、これら諸国の意見を総合して
台湾関係がどのように発展するかを判断することが大切だ。

 台湾の新政権は真っ先に蔡英文が「現状維持」を発表をすると思われる。民間では独立志向の強
いグループが批判するかもしれないが、当選しても早急に独立志向を表明するような愚行を犯して
はならない。現状は徐々に変化していくもので、台湾のような国際的にあまり注意されない(中華
民国も、である)政権が慌てて独立を発表するより国を安定させ諸国との関係を好転させる方が大
切である。

 新政権にとって最も大切なことは内政である。これまでの国民党政権は司法、行政、経済など各
方面で不合理な官商癒着、国民党独裁と官僚の汚職が絶えなかった。真っ先に司法を改革して正し
い政治が行われ、実行力のある政権を目指すことが肝要である。

 次に重要なことは外交と軍隊の改革である。馬英九は8年の政治において「外交休戦」を主張
し、外交も軍隊もすっかりダメになった。

 外交を中止する国は世界で初めてである。何年もアメリカと交渉して買った最新のアパッチヘリ
コプターを軍人が芸人に基地に入って参観することを許し、機密のコックピットに座って写真を取
らせ、結果として軍人も芸人も有罪判決を受けなかったような呆れた国である。いくら最新の武器
を買っても戦争など出来るはずがない。新総統の任務は国を立て直すことである。新総統の当選演
説でこれら諸問題についての抱負を注意して聞くべきである。

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  (ニホンリトウキトモノカイ ジムキョクチョウ ユハラマサタカ)

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  日本李登輝友の会 (ニホンリトウキトモノカイ)
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・中嶋嶺雄先生講演録「台湾の将来と日本」(2003年6月1日)
・日本李登輝友の会設立総会(2002年12月15日)

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