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【メルマガ日台共栄:第2357号】 公民投票の問題点  傳田 晴久

2015/03/25

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1>> 公民投票の問題点  傳田 晴久
2>> ひまわり学生運動一周年に関する産経新聞の記事について 王 明理
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1>> 公民投票の問題点  傳田 晴久

 台南に住む傳田晴久(でんだ・はるひさ)氏から「台湾通信」が届きました。立法委員の補欠選
挙の結果を伝えるとともに、立法委員を罷免しようとして実施された公民投票(住民投票)の問題
点を取り上げています。

 真の民意をどのように反映させるかという点で、日本でも住民投票や国民投票の可否についてよ
く議論になりますが、台湾でも問題の根は同じようです。

 なお、原題は「割闌尾の結末」でしたが、日本向けに「公民投票の問題点」と改題していること
をお断りします。

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割闌尾の結末 傳田 晴久
【台湾通信(第95号):2015年3月23日】

◆はじめに

 台湾では昨年(2014年)11月29日に行われた「九合一選挙」において国民党が大敗いたしました
が、その後、今年(2015年)2月7日に立法院委員(国会議員)の補欠選挙が行われ、また2月14日
には「割闌尾計画」の公民投票が行われました。いずれも政治の今後を占う格好の材料と思います
ので、私が理解した範囲ですが、報告と若干のコメントを申し上げたいと思います。

◆補欠選挙の結果

 昨年の「九合一選挙」(統一地方選挙)の際、屏東県、南投県、彰化県、台中県、苗栗県選出の
立法委員5名がそれぞれ市長選挙に立候補し、当選しました。その結果、5人の立法委員が空席とな
り、補欠選挙が2月7日(土)に行われました。立法委員が市長になった5人の所属政党は国民党が2
人、民進党が3人でした。民進党は「九合一選挙」の勢いを駆って全席を取る(蔡英文:総力戦
で・・・・)、一方の国民党はもはや一席も落とせない(新主席朱立倫:補選に全力投入を・・・・)との
決意を投票日直前語っていました。

 果たせるかな、結果は国民党が2席(苗栗県、南投県)、民進党が3席(屏東県、彰化県、台中
市)を、それぞれに有利な地域を手堅く獲得、議席数は変化なしとなりました。

◆「割闌尾計画」の経緯とその結末

 台湾通信No.85「核四と公投(2)」で説明いたしましたが、「割闌尾」のもともとの意味は「虫
垂を切り取る」すなわち盲腸炎の手術を意味しますが、「割」(ge1切り取る)は「革」(ge2罷免
する)に発音が似ている、「闌尾」(lan2wei3虫垂)は「爛委」(lan4wei3腐った議員)あるいは
「藍委」(lan2wei3国民党の議員)に通じるというので、政党に関係なく役に立っていない立法委
員を罷免しようという意味です。

 この運動は昨年(2014年)3月の「ひまわり學運」の最中に生まれ、5月には具体的に3人の立法
委員を名指し、罷免手続きに入りました。一国の国会議員を罷免するわけですから、それなりの厳
しいハードルがあり、この運動を推進する民間の有志たちは手弁当で署名運動や街頭宣伝を続け、
ようやくこの2月14日に公民投票実施にこぎつけました。

 台湾では「公職人員選挙罷免法」(2011年5月25日修正)で公職人員(立法委員や地方自治体の
議員や首長)を罷免する手続きが定められており、手続は1)まず当該選挙区の有権者の2%の同
意を以って罷免案を提起、2)次に罷免提議書を選挙委員会に提出、そして有権者の13%以上が罷
免案に同意し、連署する。そして3)罷免投票が行われ、選挙人の投票率50%以上でかつ賛成票が
有効票の半分以上であれば、この罷免案は成立するとなっています。

 今回の「割闌尾」の対象となったのは、2012年1月の立法委員選挙で選ばれた国民党の蔡正元立
法委員です。彼はなぜ罷免されねばならないのか、「割闌尾」を推進する人々によれば、国民党の
言いなりで民意に背いている、議会への出席率は最低で、質問もほとんどしない、国家暴力(警察
権の乱用)を是認している、言論弾圧に加担している、民族差別意識がある、など9つの理由が挙
げられ、要するに立法委員としての資質に欠けているということのようです。

 14日の投票結果は、彼の選挙区は台北市第4選区(内湖、南港区)で有権者は317,434人であり、
その中の半分158,717人の投票が最低限必要であったが、実際に投票した有権者は79,303人,投票
率は24.98%で規定により罷免案は否決されました。

 投票者の内、罷免案に同意した票は76,737票,不同意票が2,196票,無效票370票であったが、新
聞は次のようなグラフを提示しました。

 これでは、そそっかしい人は圧倒的多数の人が罷免に賛成したにもかかわらず、制度が悪い(投
票率の障壁がある)ために資質に問題ある立法委員を救済してしまったと理解するかもしれませ
ん。

◆スコットランド独立公投の例

 最近の知見ではスコットランド独立公投が参考になるのではないか。昨年(2014年)9月18日に
行われたスコットランドの独立を認めるかどうかについての国民投票があり、結果は賛成44.7%、
反対55.3%で否決されたが、その投票率は84.59%という高いものであり、多くの人々が関心を
持って投票したことがうかがわれ、その結果に賛否両当事者は納得し、諸外国の人々もイギリスの
政治的成熟度に感心したものである。

 割闌尾の投票率はわずかに25%、全有権者の4分の1である。すなわち4分の3は意思を表明しな
かった、すなわち立法委員の罷免に賛成か反対かの意見を表明しなかったのである。

◆多数決原理と投票率について

 多数決原理そのものは理解できますが、問題は投票者の理解の程度ではないでしょうか。石原慎
太郎氏は雑誌「WiLL」2015年3月号で、「日本維新の会が原発に対する根本的な認識を欠いたま
ま、政府の原発輸出協定に反対することを決めた」が、その決め方は多数決であったことに触れ、
「こうした国家の名誉にかかわる根本的な問題、つまり原子力そのものに対する否定につながりか
ねない国際協定の賛否は当然一種の文明論として討議、討論されるべきものと私は主張しました
が・・・」と述べておられる。

 2015年2月15日に日本の埼玉県で、入間基地の戦闘機の騒音問題対策として所沢市の小中学校へ
の空調設備設置の可否を巡って住民投票が行われたが、投票率は31.54%で法定得票数公民の1/3以
上に達せず、設置は見送られることになったと自由時報は伝えています。

◆投票率の問題

 問題は投票率である。スコットランド独立公投の投票率は84.59%と非常に高いのに比べて、
「割闌尾」の投票率は24.98%であり、5人の立法委員補欠選挙の投票率は屏東県32.44%、南投県
37.07%、彰化県37.56%、台中県30.76%、苗栗県35.15%、所沢市の住民投票の投票率は31.54%
であった。

 確かに台湾の公投の投票率の障壁(50%)、所沢市の障壁(1/3)は高く感ぜられるかもしれな
いが、投票しなかった人々の民意が不明なのは問題である。投票しなかったのが悪いと言えばそれ
までだが、投票率を左右する要因が問題ではないか。

 スコットランド独立公投の結果は住民の生活に極めて重要な影響を与えるので、多くの有権者が
意思表示をしたと考えられるが、「割闌尾」の場合は、政治的意義は大きいが、住民の生活に直結
するモノとは思われず、棄権は「ノー」の意思表示かもしれない。学校エアコンのケースは学童生
徒がいる有権者は関心が高いかもしれないが、そうでない有権者にとっては費用負担のみがかかっ
て来るので、消極的になったのではないか。こういう問題は住民投票になじむのだろうか。補選の
低投票率は無関心が原因であろう。

 割闌尾計画が否認された推進グループは当然投票率による障壁の存在を問題視し、この障壁の高
さを下げるよう要求している。2014年5月に民進党は第1段階の2%を1%に、第2段階の13%を6%
に、第3段階の投票率50%以上の規定を賛成票が選挙区の25%以上かつ反対票を上回るという規定
に変更することを求めたが、国民党によって阻止されたと言います。

 障壁を下げろとの要求は理解できない訳ではないが、低投票率の下での多数決は妥当だろうか。
極端な話かもしれないが、多くの有権者が投票に行きにくい状況を作り出す、たとえば投票日を特
定の日に決める、投票場所を限定する、投票者を監視する、投票しないように脅したり、金銭で勧
誘するなどして、低投票率状況を作り出して、特定の一派のみの投票で多数決決定をすることは考
えうる。現に2016年初に行われる総統選挙、立法委員選挙の投票日は1月16日(土)に決定したそ
うであるが、15日までは学校の期末試験であり、投票日に故郷(投票所)へ帰るのが困難だと聞
く。これによって若者の投票が制限されることを心配する向きもある。

 投票率による制限(障壁)を緩めるかどうかを決定する前にやるべきことがあると考える。割闌
尾の例であれば、この非投票者23.8万人を対象にランダムサンプリング調査でよいから、意識調査
を実施してみたいものだ。投票に行かなかった理由(興味なし、関心なしがほとんどであろう。し
かし、中には行かないように圧力をかけられたというのもあるかもしれない)、もし投票に行った
としたらどちらに投票するか(分からないがほとんどか)、メデイアは調査力があるのだから、一
遍試みてはいかがか? そして、もともと投票に行く意思がない有権者が多数いるのであれば、意
識改革を積極的に進める必要があると同時に、障壁を緩めるのもやむを得ないかもしれない。

◆おわりに

 思うに、選挙であれ、公投であれ、争点、焦点を分かりやすく説明し、投票の重要性を強調し、
有権者の意識向上に努めることが重要であろう。

 「太陽花學運」による立法院占拠から丁度一年がたちましたが、あの学生たちによる活動は明ら
かに台湾の人々の政治に対する意識を向上させたと考えられます。しかし、補選も割闌尾も一部の
地域の投票行動ではありますが、投票率は決して高いものではない。

 多くの識者が述べているように若い人々の行動に変化がみられるということに期待したいもので
す。

 そういえば日本でも来月は統一地方選挙ですね。日本での投票率はどうなるのでしょうか?

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2>> ひまわり学生運動一周年に関する産経新聞の記事について 王 明理

 どうも産経新聞の台湾報道がおかしい。違和感を覚える記事が少なくない。例えば、3月23日付
掲載の「隠れた『新住民』問題」という見出しを付した「台湾有情」で「台北市の柯文哲市長がま
た『失言』をした」と書き、柯市長の発言を批判している。

 確かに柯市長は「女性蔑視」ということで、何とか足を引っ張ろうとする反柯市長勢力からここ
ぞとばかり叩かれた。しかし、「新住民」というテーマなら、柯市長の発言もさることながら、李
登輝元総統が常々言っている「新台湾人」を引き合いにしてもよかったのではないか。

 ましてや、柯市長は本当に女性を蔑視しているのか、これまでの発言を確認してから記事を書い
て欲しいと思ったのは編集子だけではないようだ。これでは、柯市長叩きにやっきとなっている勢
力の代弁者とみられても致し方あるまい。

 王明理さん(台湾独立建国聯盟日本本部委員長、本会理事)も産経の台湾報道に違和感を覚えて
いたようで、ひまわり運動を取り上げた3月18日付の記事について「もう少しよく台湾の現状を見
て報告して頂きたい」と苦言を呈している。メルマガ「台湾の声」から転載してご紹介したい。

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ひまわり学生運動一周年に関する産経新聞の記事について 王 明理
【メルマガ「台湾の声」:2015年3月22日】

 3月18日付産経新聞、田中靖人氏の「台湾 立法院学生占拠から1年」と題する記事について、
少々私見を述べさせていただきたいと思います。

 大きい見出しの「第3勢力の台頭遠く」と小見出しの「学生らは散り散りに」は、読者にひまわ
り学生運動が単発的な行動であったことを印象づけてしまいますが、これは現実に即していませ
ん。

 学生たちは昨年の4月10日に3週間に亘る議場選挙を終了した後も、形を変えて活動を継続してい
ますし、さらに年下の学生たちにバトンタッチされています。

 立法院内で活躍したある若者はこのように話しています。

 「これはビッグバンと同じで、大爆発の後どんどん新たな星雲を形作り膨張していくんです
よ。」

 台湾では今、若者達も中高年も日本語世代も同じ気持ちで前を向いています。様々な政党や団体
が出来て、次の立法院選挙に向けて活動を開始しています。かつて不毛であった地に、若い芽が幾
つも出て育っているのです。それを「学生たちは散り散りに」と表現しては、日本の読者に誤解を
与えてしまいます。

 そもそも、国民党、民進党に対抗する第三勢力を結集することが目的で始めたことではないので
すから、「第3勢力の台頭遠く」と決めつけ、大きな見出しにするのは早急だし、意味がありませ
ん。

 もう一点、結びの文章の“「台湾人意識」が強い若年層には、「台湾独立」を掲げていたはずの
民進党が対中関係で軟化していると映るようだ。”という一文も、にわとりと卵の順序が逆です。

 民進党が台湾独立を掲げなくなったのは、選挙戦術でした。それでは、民進党の民進党たる所以
を自ら否定したことになり、存在意義が分からなくなってしまいました。しかし、彼らの苦渋もよ
く分かります。

 「台湾独立と言ったら武力侵攻するぞ」と中共に脅されている状態では、「台湾独立」より「現
状維持」を望む国民が2008年、2012年当時は大多数だったのです。「選挙に勝つためには中国とう
まくやっていけることを見せなければならない」という戦術を取らざるを得なかった。

 ところが、台湾人が「現状維持」のために国民党を選んだ結果、馬英九の傾中政策により、中国
の脅威が増して現状が維持できなくなったのです。そして、皮肉なことにその危機感から「台湾人
意識」が前より強くなり、若者が立ち上がったのです。「民進党が対中関係で軟化している」とい
う現在進行形のような書き方は間違いだと思います。民進党は今、大いに悩んでいるはずです。

 産経新聞は、古くから、台湾人の頼りとするメディアです。だからこそ、もう少しよく台湾の現
状を見て報告して頂きたいと思うのです。

(執筆者は台湾独立建国聯盟日本本部委員長)

                  ◇   ◇   ◇

 産経新聞オンライン版の記事(新聞では大きい見出しになっていた「第3勢力の台頭遠く」と小
見出しの「学生らは散り散りに」は、オンライン版にはない):

「台湾が中国の一部にならないで」議場占拠1年 中台接近に歯止め
「第三勢力」台頭はならず
【産経新聞:2015年3月17日】

http://www.sankei.com/world/news/150317/wor1503170051-n1.html

写真:立法院に突入した際の状況を、地図を書いて説明する清華大大学院生の黄郁芬さん=12日、
   台北市内(田中靖人撮影)

 【台北=田中靖人】中国とのサービス貿易協定に反対する学生らが立法院(国会に相当)を占拠
した「ヒマワリ学生運動」は18日で1年を迎える。反中感情と政治不信を背景に起った運動は、若
年層の政治参加意識を高め、統一地方選の与党大敗で中台の急速な接近に歯止めをかけることにつ
ながった。だが、占拠後の運動自体は分散化し、予想された「第三勢力」の台頭には至っていな
い。

 「議場は真っ暗で、見えたのは非常口の明かりだけ。(突入に)成功すると思っていなかった」

 昨年3月18日夜、議場に最初に入った学生の一人、清華大大学院生の黄郁芬さん(25)はこう振
り返る。前日の委員会審議が「30秒」で打ち切られ、危機感を持った黄さんを含む学生団体の幹部
らは18日午後、突入を決めた。「私の世代で台湾が中国の一部になってほしくない。突入すれば新
聞に載り、時間を稼げる。その間に次の行動を考えるつもりだった」。

 運動は想定を超えて広がった。求めていた協定の「撤回」は実現しなかったが、黄さんは「全台
湾の一人一人が立ち上がって社会を変えた。当初の要求の成否より、その意義の方が尊い」と総括
する。

 昨年末の統一地方選で馬英九政権の親中政策に「ノー」を突きつけ、与党、中国国民党を大敗に
導いたのも、運動に刺激された若者だとされる。だが、1年後の現在、参加した学生や市民がメ
ディアなどで期待が高まった「第三勢力」と呼べるほどの政治力を確立するに至っていない。

 学生らは占拠終了後、複数の団体に分散。指導者の一人は今年2月の立法委員(国会議員)補欠
選に出馬を表明したが、過去の痴漢行為を批判され表舞台を去った。最も注目された林飛帆氏
(26)は、兵役代替服務で活動を“休止”している。運動を支援した弁護士の頼中強氏は15日のシ
ンポジウムで、運動は主張の異なる市民や学生の団体が一時的な危機感で団結したもので、「単一
団体への組織化はすぐにはできない」と指摘した。

 若者の政治意識の高まりが、運動を応援した野党、民主進歩党への支持に直結しているとも言い
難い。参加した社会運動家らが、複数の新政党や無所属で立法委員選への出馬準備を進めているこ
ともその証左だ。

 1月に政党「時代の力」を設立した林[永日]佐党首(39)は「民進党は結党約30年でしがらみが
多く、主張も矛盾している」と批判。黄さんも「私たちが行動したのは、民進党が協定を阻止でき
なかったからだ」と語った。「台湾人意識」が強い若年層には、「台湾独立」を掲げていたはずの
民進党が対中関係で軟化していると映るようだ。

【用語解説】ヒマワリ学生運動

 中国とのサービス貿易協定の批准に反対する学生ら約300人が立法院の議場を23日間、占拠した
運動。支持者が届けたヒマワリが名前の由来。民進党は占拠を支持し、周辺では「50万人」という
支援デモも行われた。学生らは協定の条文ごとの再審査と中台交渉の監視法制定を条件に退去し
た。協定は現在も批准されていない。香港の学生デモにも影響を与えたとされる。

※台湾の声編集部註:林[永日]佐とは、台独ヘビメタバンド「ソニック」のフレディーのこと。

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