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幕末マガジン

幕末維新の人物や事件の紹介。龍馬はもちろん、幕末維新史、幕末長州藩史、明治維新政治外交史、全国の幕末史跡・イベント情報なども。歴史ファン必読。

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2005/02/15

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  【幕末マガジン】 //  2005/2/15 //  Published by RyoMaX

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幕末維新の人物や事件の紹介。龍馬はもちろん、幕末佐賀藩史、明治維新政治
外交史、全国の幕末史跡・イベント情報なども。歴史ファン必読です。
 
┣【1】船中八策と新政府綱領八策 
┣【2】江藤新平の司法省設置構想  (第1回)
       
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■船中八策と新政府綱領八策       (執筆者:Mr.萌咲)
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 「船中八策」といえば坂本龍馬が土佐藩船夕顔の船上で、大政奉還とその後の
政治、経済について起草した八か条の条文であるとされ、とても有名です。また
その後龍馬は「新政府綱領八策」というやはり船中八策とよく似た条文を記して
います。両者の内容は似ていますが、若干異なります。この違いについて考察し
てみたいと思います。
まずは、両者の全文と背景をまとめてみます。(ひらがなは、原文ではカタカナ)

【1】船中八策
◆全文
一、天下の政権を朝廷に奉還せしめ、政令宜しく朝廷より出づるべき事
一、上下議政局を設け、議員を置き、万機を参賛せしめ、万機宜しく公議に決す
べき事
一、有材之公卿諸侯及び天下之人材を顧問に備へ、官爵を賜ひ、宜しく従来有名
無実の官を除くべき事
一、外国の交際広く公議を採り、新に至当之規約を立つべき事
一、古来の律令を折哀し、新に無窮の大典を撰定すべき事
一、海軍宜しく拡張すべき事
一、御親兵を置き帝都を守衛せしむる事
一、金銀物価宜しく外国と平均の法を設くべき事
以上八策は方今天下の勢を察し、之を宇内万国に徴するに、之を捨てて他に済時
之急務あるなし。苟くも此数策を断行せば、皇国を挽回し国勢を拡張し、万国と
並行するも亦敢て難しとせず。伏して願くは公明正大の道理に基づき、一大英断
を以て天下を更始一新せん。
◆背景
(1) 慶応3年6月前半、いろは丸事件をほぼ解決させた龍馬、後藤象二郎らは、
土佐藩船夕顔で兵庫に向かった。京都に入った6月15日、後藤象二郎が初めて
大政奉還論を土佐藩の藩論とすることを決定し、龍馬の持論を元に、海援隊文司
である長岡謙吉が起草したものとされている。
(2) 実際の原文は残されていない。

【2】新政府綱領八策
◆全文
第一義 天下有名の人材を招致顧問に供ふ
第二義 有材の諸侯を撰用し、朝廷の官爵を賜ひ現今有名無実の官を除く。
第三義 外国の交際を議定す。
第四義 律令を撰し、新に無窮の大典を定む。律令既に定まれば諸侯伯皆此を奉
じて部下を率す。
第五義 上下議政局
第六義 海陸軍局
第七義 親兵
第八義 皇国今日の金銀物価を外国と平均す。
右予め二、三の明眼士と議定し、諸侯会盟の日を待て云々、○○○自ら盟主とな
り、此を以て朝廷に奉り、始め天下万民に公布云々、強抗非礼、公議に違ふ者は
断然征討す。権門貴族も貸借することなし。
慶応丁卯十一月 坂本直柔
◆背景
(1) 原文にある通り、慶応3年11月に作成されたもの。
(2) 現在、2通の原文が存在し、送り仮名の違いが一部あるものの内容は全く同
じものである。

 「船中八策」と「新政府綱領八策」。条文の内容に関する違いはひとつ、「船
中八策」には大政奉還論が記されている一方、「新政府綱領八策」にはそれが無
いことです。大政奉還は慶応3年10月13日。2つの八策が作成されたとされ
る6月と11月の間に起きた出来事であり、既に大政奉還成った後に書かれた
「新政府綱領八策」にその記載が無いのは、ある意味当然となります。
 そして、もうひとつ異なるのが文章のまとまりです。「船中八策」は、八つの
条文すべてが簡潔な文章でまとまりがあり、結語も「これをもって国を一新しよ
う」と建白書として迫力のある記載になっています。一方、「新政府綱領八策」
は、「上下議政局」や「親兵」など単語のみの条文もあり、建白書としてはバラ
ンスの悪い内容です。先に作られたはずの「船中八策」の方が出来が良く、後か
ら作られた「新政府綱領八策」の方が出来が悪い。同じ人物が作ったもので、後
から作ったほうが出来が悪いなんて、あり得るでしょうか?この両者の違いによ
り、明治期から現在までのいくつかの著書でも、先に起草されたのが「新政府綱
領八策」で、それを元に推敲されたのが「船中八策」だとの考えを示されている
先生方もおられます。つまり順番が逆だということです。
ということは、私たちが目にしている「船中八策」は、「船中八策」ではなかっ
たのでしょうか。
 もともと大政奉還論はじめ「船中八策」に記された思想は、龍馬も持っていた
ものです。夕顔の船上では後藤象二郎らに持論を展開したものと思われます。し
かしながら、この建白書自体を作成したのは、長岡謙吉だと言われています。長
岡謙吉が記した「海援隊日史」には「船中八策」の元になる様な文章が記されて
いるのも事実です。海援隊文司だった謙吉ですから、このような迫力ある建白書
を書くことが出来たのだと思います。土佐藩が大政奉還論となった慶応3年6
月、「船中八策」のような建白書が書かれるのはタイムリーであり、必然的なも
のだと思われます。
 では、「新政府綱領八策」はどうでしょう。バランスが今ひとつの原稿とも思
わせるこの書も、使用目的を推測すれば、「船中八策」の後で書かれたものとし
て理解できるのではないでしょうか。
もう一度「新政府綱領八策」を読んでみると、第一、二、四義が「船中八策」と
ほぼ同じ記載内容です。つまり、有名な人材を招致し、諸侯からも有能な人材を
選ぶことに関する内容が強調されています。
大政奉還が成立した後の龍馬は、福井越前藩の三岡八郎や幕臣の永井尚志らを訪
問し、新政府立ち上げ後の人材招致などのために奔走しています。つまり、彼ら
を説得するために「船中八策」の人材招致部分の強調版である「新政府綱領八
策」を龍馬自ら作成したのではないでしょうか。現在、2通の書が残されている
のも、新政府に参画してもらう様、複数の人物に手渡すことを目的として作られ
たのではないかと思うのです。そう推測すれば、出来の良い「船中八策」の後に
「新政府綱領八策」が作成されたとしても納得出来ると思うのです。


執筆者メールアドレス
moesaki@sky.sannet.ne.jp
執筆者HP
http://www.sky.sannet.ne.jp/moesaki/

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■江藤新平の司法省設置構想  (第1回)  (執筆者:松ノ落葉)
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今月から版籍奉還後、廃藩置県に至るまでに策定された国家機構整備の一つとし
て、江藤新平の司法制度改革を中心に述べていきたいと思います。

◆職員令における司法権の問題点◆

明治2年6月の版籍奉還の直後、政府は祭政一致を建前とする職員令を制定して
政府組織の改革を推し進めた。しかし、未だ試行錯誤を繰り返している最中であった
ため、まだまだ全国支配体制は安定しなかった。
今回のテーマである司法権を見ると、司法・立法・行政の3権は太政官が一括して
握っており、当然司法事務の最高決定権も太政官にあった。諸官庁を見ても、刑部
省は民事以外の全ての権限を有し、民部省は民事関係、府藩県は地方官、これ
以外にも弾正台というものが存在し、訴追権等の事務を有しており、明治新政府の
司法権は完全に分裂している状態だった。さらに刑部省と弾正台の権限範囲が
明確でないために起こる対立や抗争等、当時の政府にとって司法権の統一は避け
ては通れない課題であった。

江藤新平は明治2年11月8日、太政官中弁に任命され、翌3年2月には制度取調
専務、さらに4年2月に制度局御用掛兼務となった。弁官の職務内容は現在の内閣
官房長官と法制局を兼ねたようなもので、弁官は各省や地方官が発する書類を審査
したり、太政官が発する布告や達、指令等の起案も弁官の仕事だった。江藤の場
合、中弁就任後に起きた虎の門事件のアクシデントを抜きにして考えると最初から
江藤を制度取調担当として起用しようと政府は画策していたものと推定できる。

◆意見書の提出◆

明治3年6月、大納言(副首相)岩倉具視は6日付けで江藤に書簡を送り、「力を
極て御書取給度」く、また「大綱目も調べ」て意見書を作成してくれるよう頼んで
いる。
また、9日にも江藤に書簡を送り、「片時も早く御書立」下さるよう頼んでいる。
このように岩倉が早期に提出を求めている背景には、明治2年6月の版籍奉還と
7月の職員令の2大改革によって明治政府は中央集権国家樹立を目指すことに
なったが、西南雄藩を中心に政府の中央集権化政策に不満を抱き、また政府内
にも薩摩閥と長州閥の対立、さらに国家機関でも太政官と民部・大蔵両省の対立
が深刻を極めていた。三条右大臣や岩倉大納言、参議大久保利通ら政府首脳は
専門的知識に乏しかったので、適切に対応することが出来なかったのである。こう
した情勢を打破するため、国家機構の抜本的な改革を期待されることとなった。
司法制度改革構想もこうした国家機構改革の一部だったというわけである。

この江藤意見書は、毛利敏彦著「江藤新平」によると明治3年7月末か8月初め
には提出されていたとのことである。大綱目(政体書)を調査して作ったものにして
は驚異的なスピードといえる。

この江藤意見書において、「建国の体」を次のように規定している。

(1)君主独裁
(2)国内郡県
(3)上下両議院を設置、会計刑法の両事を議定する、但し決定機関は太政官
(4)制法政令の法を分け制を立る事
(5)兵籍は上に帰す、但し大臣納言参議預り議し、尚上下両議院も軍律会計の
議に付て関係す

(1)の君主独裁は前掲「江藤新平」によれば、民権に対する君権というよりも
国家の統一、集権の必要を訴えていると解釈するべき、と説いている。確かに
根拠をあげると、後に続く「制法(立法)と政令(行政)を分け」るとあるから専制
政治とは正反対の立憲政治を理想としていることがわかる。

(2)は前年6月に版籍奉還が実現したが、江藤意見書草稿には郡県制はすでに
その版籍奉還によって既に決定済であると確認している。これは翌年の廃藩置県
を待たずして封建制が崩壊していることを意味すると判断して間違いないであろう。
つまり廃藩置県をもって個別領有制(藩の廃止)の崩壊だと説くのは見解違い
といえる。一応「藩」という呼称は残ったが、領有権は天皇の手に移っていたので
ある。

この他上下両議院設置、制法(立法)政令(行政)の分離、兵籍は上(天皇の
軍事権掌握)を国家体制の基礎であるとしたうえで、江藤は28項目に及ぶ施策
を提案しているが、そのうち司法制度改革に関するものとして司法台の設置を
あげている。この他司法関係のものをあげてみると

(第14)司法官重事の条々を定む
(第23)訴訟法を定む
(第24)司法官の規則全く定む

の3項目をあげている。この江藤意見書の施策が即実施されたわけではないが、
明治4年の司法省設置に直接関係してくる司法台設置構想はこののち大久保と
連盟で提出する「政治制度上申案箇条」や「官制改革案」等でも正式に提言して
おり、江藤が司法制度の改革には特に強い関心を抱いていたことは疑いないで
あろう。


次回は岩倉具視の「建国策」、他に「政治制度上申案箇条」や「官制改革案」、
「政体案」の3案を中心に江藤の司法制度改革構想を述べていきたいと思います。

参考文献

「江藤新平」 毛利敏彦著 中公新書
「明治国家の形成と司法制度」 菊山正明著 御茶の水書房
「法と裁判」 利谷信義編 学陽書房
「明治前期の司法について[補正版]」 蕪山嚴著

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